1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さんのやり直しの裁判(再審)で、静岡地裁の国井恒志裁判長は「裁判所は自由の扉を開けた」と述べた。判決言い渡し後の説諭で袴田さんに代わって出廷した姉、ひで子さんに語った。
国井裁判長はひで子さんに改めて無罪とした判断のポイントを説明。検察側が控訴した場合、東京高裁で審理が続くことを伝え、「無罪判決は確定しないと意味がない。時間がかかっていることは裁判所としては本当に申し訳ない」と言葉を詰まらせた。
午後2時に開廷を宣言した国井裁判長は冒頭、「約11カ月という短い期間で判決を迎えられた。弁護人と検察官のご協力に敬意を表する」と言及した。
袴田さん本人が出頭していないことを弁護人に確かめた上で、姉のひで子さんに「主文だけでも証言台の前でお聞きください」と促した。自席から立ち上がったひで子さんに「ゆっくりでいいです」とも呼びかけた。
被告人は無罪――。国井裁判長が一息に告げると、傍聴席から拍手が起こった。主文を聞き終えたひで子さんは自席に戻る際、弁護団の事務局長を務める小川秀世弁護士と握手を交わした。
「証拠に3つの捏造(ねつぞう)が認められる」「被告人が犯人であるとは認められない」。ひで子さんは時折ハンカチで目を拭いながら判決理由の読み上げに耳を傾けた。出廷した検察官は手元の資料に目を落としたままだった。
国井裁判長は1994年に任官し、刑事裁判を長く担当するベテラン。東京高裁判事などを経て2021年から静岡地裁で部総括判事を務めている。再審開始前には袴田さんと面会。拘禁症状の状態を確認し、出廷免除の決定をした。
最近では静岡県牧之原市の認定こども園の園児が通園バスに放置され、熱中症で死亡した事件の審理を担当。24年7月の判決言い渡しでは元園長を実刑とした上で園児が「子どもの命を守る大切さを教えてくれた」と説諭した。
前橋地裁時代の20年には車を運転中に意識障害に陥り女子高生2人をひいて死傷させたとして、自動車運転処罰法違反罪に問われた当時80代の男性に対し、服用した薬が影響した可能性などを挙げて無罪を言い渡した。
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