【北京=石井宏樹】中国南部の広東省深圳市で18日朝、日本人学校に登校途中だった男子小学生(10)が、男(44)に刃物で襲われて負傷した。男児は病院に搬送されて治療を受けているが、けがの程度は明らかになっていない。

◆学校から200メートル 親と通学中

 日本政府関係者や中国外務省によると、現場は学校から200メートルほど離れた場所で、男児は親と通学していたという。当局がその場で男の身柄を確保して取り調べている。在広州日本総領事館は現地に職員を派遣して、情報収集や被害者の支援に当たっている。

中国・深圳で18日午後、日本人学校の男児が襲われた現場付近=河北彬光撮影

◆6月には蘇州で母子が

 中国では6月にも、東部の江蘇省蘇州市で、日本人学校のスクールバスを待っていた日本人の母子が刃物で切りつけられる事件が発生している。  在中国日本大使館の金杉憲治大使は報道陣に「蘇州での事件に加えて今回の事件が発生し、忸怩(じくじ)たる思いだ」と述べた。学校の警備を強化するとともに中国外務省に邦人の安全確保を要請した。

◆中国「外国人の安全守る」

中国外務省の林剣(りんけん)副報道局長は18日の定例記者会見で「中国は引き続き有効な措置をとり、中国にいるすべての外国人の安全を確実に守る」と述べた。  深圳はハイテク産業の集積地として知られ、多くの日本企業が進出。昨年10月時点で3600人の日本人が住んでいる。 ◇

◆反日感情高まりやすい時期

 【深圳=河北彬光】中国で6月に続き、再び日本人学校の関係者が被害に遭う事件が起きた。18日は満州事変の引き金となった柳条湖事件のあった節目の日で、反日感情が高まりやすい時期にあたる。事件との関係は不明だが、現地のみならず中国全土の邦人社会に不安が広がっている。  深圳日本人学校そばの歩道。事件から時間が経過した18日午後も現場の路面には血とみられる痕が残り、事件の凄惨(せいさん)さを物語った。中国の交流サイト(SNS)に公開された事件発生間もない現場の動画には、武装した警察官が多数警戒する姿が映り、厳戒態勢をうかがわせた。

◆「公共の場で日本語を大声で話さないように」

 北京の日本人学校に子どもを通わせる30代の母親は「またか、と驚いた。これだけ事件が続くと、どうやって子どもを守ればいいのか」と不安を隠さない。事件を受け、中国各地の日本人学校は登下校時の警備強化に乗り出し、公共の場で日本語を大声で話さないよう保護者に注意喚起した。

北京の天安門広場

 現地邦人が注視するのは、日本人を標的にした事件か否かという点だ。6月に江蘇省蘇州市で日本人母子ら3人が切りつけられた事件は、中国外務省が「偶発的」と説明。日本人を狙ったものでないことを示唆した。外交筋によると、日本政府は事件の情報提供を求めたが、中国側は動機面などを明らかにしておらず詳細は不明のままだ。

◆「柳条湖事件」から93年 各地で行事

 18日は1931(昭和6)年の柳条湖事件から93年にあたる。関連行事が東北地方の遼寧省瀋陽など各地で開かれ、その様子が国営メディアで報じられている。一方で最近は中国経済の減退で失業率も悪化し、一部の市民の間に不満が募っている状況もある。  事件は邦人の体感治安だけでなく、日系企業の活動にも悪影響を及ぼしうるとの見方が出ている。中国の日系企業幹部は「駐在員の家族帯同を控える動きも出てくるのではないか」と指摘した。 

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