原子力規制委員会の5人の委員のうち、石渡明委員と田中知委員は18日、2期10年の任期を満了して退任します。

このうち、地震や津波など自然災害対策の審査を担当した石渡委員は、去年、原発の運転期間を実質的に延長する政府の方針を受けて行われた、原発の老朽化に対応する新しい制度の採決で、「安全性を高める方向での変更とは言えない」などと主張して5人の委員のうちただ1人、反対しました。

これについて、退任会見で石渡委員は、「私の考えは一切変わっていない。意見が通らなかったのは残念だ」と述べたうえで、「安全性の懸念については、われわれのあとの委員の方々がきちんとした審査をして判断するものと期待している」と述べ、後任に託す考えを示しました。

また、核セキュリティ対策や核燃料サイクル施設などの審査を担当してきた田中委員は、「規制側としての独立とともに、世の中の動きを知るのも大切で“孤立しない独立”を重視してきたし、今後も重要だと思う」と述べ、社会情勢が変わる中でも独立して原子力の規制を行う重要性を語りました。

規制委員会の新しい委員には、原子力工学が専門の長崎晋也氏と、地震学と火山学が専門の山岡耕春氏が19日就任します。

石渡委員 “原発運転延長制度”にただ1人反対も

18日、任期満了で退任する原子力規制委員会の石渡明委員は去年2月、原子力発電所の運転期間を実質的に延長する政府の方針を受けて行われた、原発の老朽化に対応する新たな制度の採決で、5人の委員のうち、ただ1人反対しました。

政府は去年、原発の運転期間を原則40年、最長60年とする規定を、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法から経済産業省が所管する電気事業法に移したうえで、規制委員会の審査などで停止した期間を60年に追加して運転できるようにしました。

石渡委員は去年2月、原子炉等規制法の改正案について議論が行われた際、政府の方針について、「審査を厳格に行うほど運転期間が延びるような案だ」と指摘したうえで、「電力会社の責任で不備があって審査を中断するなどした場合でも、その分あとで運転期間を延ばしてよいというのは非常におかしいと思う」と述べて問題視しました。

このあと行われた、運転期間が延長されても定期的に安全性を確認するなどとした新しい制度の採決にあたって、石渡委員は「科学的・技術的な新しい知見に基づくものではなく、安全性を高める方向での変更とは言えない」などと述べて、ただ1人反対し、賛否が分かれたまま、重要な制度が決定される異例の事態となりました。

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