東京都は18日に開会した都議会定例会に、客が従業員らに理不尽な要求や暴言をするカスタマーハラスメント(カスハラ)を防止する条例案を提出した。成立すれば、カスハラを禁止する条例としては全国初で、来年4月に施行する。罰則はなく実効性の担保や、正当なクレームとの判別など課題も多い。

小池百合子知事(資料写真)

◆「社会全体で対応しなければいけない」

 小池百合子知事は所信表明で「誰もが等しく豊かな消費生活を営み、働く全ての人が力を存分に発揮できる社会を東京が先頭に立って切り開いていく」と条例の意義を強調した。  条例案は、カスハラは働く人を傷つけ、商品・サービスの提供や事業継続に悪影響を及ぼすものとして「社会全体で対応しなければいけない」と明記。「何人も、あらゆる場面においてカスタマーハラスメントを行ってはならない」と定めた。  対象は都内で事業をする法人・団体、働く人、顧客で、それぞれに責務を規定。客が働く人への言動に気をつけることや、カスハラがあった場合、法人が客に行為をやめるように申し入れることなどを課した。

◆正当な主張ふまえ「顧客の権利に留意を」

 一方、客が正当な主張をためらわないよう「顧客の権利を不当に侵害しないように留意しなければいけない」とも定めた。都は施行までにガイドラインを作り、カスハラにあたる行為について具体例を明示する。  有識者を交えた検討部会では当初、「罰則を設けた方がいい」との声もあったが、線引きの難しさなどが指摘され、設けないこととなった。(原田遼) 

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