◆子ども3人には長期滞在許可 朗報の直後に
「家族がまたばらばらになってしまう」。埼玉県川口市で暮らして25年になる50代のMさん(仮名)は、うめくように話す。妻と次男は今月4日、入管当局から在留延長を認められないと告げられた。離ればなれにならずに日本での暮らしを望むクルド人家族=埼玉県川口市で
Mさんは1999年、トルコで命の危険を覚えて来日し、難民申請した。3年後、妻と幼い娘2人を迎えた。日本で息子2人も生まれた。2011年に東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起き、被ばくを恐れて妻子はやむなく帰国した。 Mさんは難民申請中で仮放免という不安定な立場だ。結婚した長女と、来春にも日本語学校を卒業する次女は、身に付けた日本語が役立ち、長期の在留資格を得た。8月には、同じく日本語学校で学ぶ長男にも長期の在留資格が出るとの朗報が届き、家族で喜んでいただけにショックは大きい。◆妻は目の難病 次男は高校進学を目指すが…
今回、在留資格を認められなかった妻と次男は、長期の在留資格の取得を模索しながら、短期滞在の在留資格を更新してきた。妻は難病で視野が狭くなり、付き添いがないと外出できず、服薬しながら定期的に診察を受ける。次男は今春の高校進学はかなわず、再挑戦するため地元の日本語教室に通っている。 頸椎(けいつい)ヘルニアなどの持病を抱えるMさんも4月にめまいから転倒し左腕を骨折、手術し治りつつあるが、腕はまだ痛む。6月には、難民申請中でも3回目以降の場合は強制送還を可能にした改正入管難民法が施行。自らも日本での生活継続に危うさが増した。 仮放免や短期滞在中は、就労や健康保険の利用はできない。全額自己負担の医療費のほか、生活費や学費は、働く娘2人の収入や市民団体「クルド人難民Mさんを支援する会」が催した写真展やトークイベントで募り、延べ160人の寄付などで賄ってきた。◆日本で暮らし続ける道は
この間、入管当局はトルコ大地震での被災を考慮し、妻らの在留を延長してきたが、今回は2人の在留の長期化から延長を認めなかったとみられる。 だが、妻子が住んでいたトルコの地域は地震が続き、住居や頼れる親族などの生活基盤もなく帰れない。家族は別離を恐れ、「すごいストレス」(次女)を感じながら、同会や行政書士らに相談し、日本で暮らし続ける道を懸命に探る。 Mさんは訴える。「妻は目が悪く、次男はまだ子ども。帰っても暮らしていけない。一緒に日本にいることを認めてほしい」クルド人 トルコ、イラク、シリアなどに居住。独自の言語や文化を持ち「国を持たない最大の民族」と呼ばれる。同化政策を進めるトルコから逃れ、欧米を中心に難民認定されるケースは多い。日本では埼玉県川口、蕨両市などに約2000人が暮らす。
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