国民生活センターは2022年に「パーソナルトレーニング」への注意を呼びかけた

スポーツジムなどでのトレーニングによる事故が2023年までの6年間で505件あったことが25日、消費者安全調査委員会(消費者事故調)のまとめで分かった。うち4割は個別指導を受ける「パーソナルトレーニング」で起きていた。運動不足解消などの目的で利用は増えており、消費者事故調は引き続き調べて事故防止を急ぐ。

「膝の靱帯を損傷した」「無料体験中に腰椎を圧迫骨折した」――。消費者事故調が消費者庁の事故情報データバンクで調べたところ、18〜23年にパーソナルトレーニングで起きた事故は209件あった。29%が治療に1カ月以上を要する「重傷」だった。背骨骨折など消費者安全法の重大事故と認められるものも9件あった。

個人ジムや個別指導の人気は近年高まっている。国民生活センターが22年に実施した消費者アンケートで、利用経験がある約1000人にパーソナル形式を選んだ理由を複数回答で尋ねたところ「1対1の方が成果が出やすい」「自分に合ったトレーニング方法を指南してほしかった」がいずれも半数を超えた。新型コロナウイルスの感染拡大期に大型ジムが敬遠されたことも追い風となった。

一方で、調査では回答の2割がケガや体調不良を経験していた。「栄養管理のアドバイスを受けて完全な糖質カットの食事を続けたら上半身に湿疹が出た」など、行き過ぎた食事制限による被害の相談もみられた。

同センターは22年4月、調査結果を公表した。あわせて、体力テスト結果などに基づいてプランが作られていることの確認や、トレーニング中に違和感を覚えたら無理せず中断するといった注意が必要だと呼びかけた。

事故多発の背景にあるとみられるのが、トレーナーの技量やノウハウの差だ。消費者事故調によると、パーソナルトレーニングのサービス提供者は多岐にわたり、業界団体に所属していない事業者や個人事業主も少なくなかった。指導に当たって義務付けられている法的な資格はなく、知識やスキルは各事業者やトレーナー個人によって違うという。

23年5月に調査を始めた消費者事故調は実態把握に時間がかかるとして、25日の経過報告公表後も調査を継続する。

原因究明や再発防止策の検討には、業界やサービスの実態を詳細に調べる必要がある。トレーナーとの雇用関係や業務内容も事業者によって異なる。消費者事故調は今後、事業者やトレーナーへのアンケート調査やヒアリングを実施するほか、国内外の法令や資格制度についても確認し、事故防止に向けてどんな対策を示せるのかを検討する。

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