兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを内部告発された問題を巡り、県議会の調査特別委員会(百条委員会)は5、6日の両日、証人尋問を実施する。斎藤氏や元県幹部らを呼び、告発者を公益通報の保護対象とせず、懲戒処分を先行させた対応に問題がなかったかなどを追及する。
5日午前、公益通報制度に詳しい上智大学の奥山俊宏教授が参考人として証言した。同日午後は、県に法的な助言をした弁護士らが証言する。出頭予定だった井ノ本知明前総務部長は安全面への懸念と体調不良を理由に欠席することが決まった。井ノ本氏は知事側近で、処分案を協議した綱紀委員会の委員長を務めていた。
6日は斎藤氏と、告発文書を作成した前西播磨県民局長を事情聴取した片山安孝前副知事(7月に辞職)に証言を求める。
前県民局長は3月中旬に告発文書を一部の報道機関などに配布。4月4日に県の公益通報窓口にも同様の内容を通報した。県が5月に前県民局長を停職3カ月の懲戒処分とした経緯を巡り、議会などから複数の問題点が指摘されている。
公益通報者保護法は報道機関などへの「外部通報」を認めているが、県は3月に文書の存在を把握後、前県民局長が保護対象となるか法的な検討を十分にしないまま人事課の調査を進めた。
斎藤氏は、同法で定める保護要件の「信ずるに足りる相当の理由」はなく、公益通報にあたらないとの見解を示している。その根拠の一つに、片山氏らによる事情聴取に対し前県民局長が「噂話を集めて作成した」と発言したとしていることを挙げる。
公益通報窓口の調査結果を待たず、懲戒処分を先行させた対応の是非も焦点となる。これまでの証人尋問で、県職員は「処分は公益通報の調査結果を待って決めるべきではないか」と進言したと証言した。斎藤氏はいったん了承したものの、先に処分ができないか検討を指示していたことが明らかになっている。
奥山氏は、「知事らは軽々に『真実相当性なし』『公益通報に該当せず』と判断するのではなく、内部公益通報に関する調査が終わるのを待つべきだった」と指摘。「公益通報に当たらない、と判断したのは拙速に過ぎた」として、知事らの行動は公益通報者保護法に違反するとの意見を述べた。
処分案を審議する5月2日の綱紀委員会では、委員である県幹部3人から「公益通報を受理している段階で処分を先行させてもいいのか」との意見が出たが、処分案を協議する綱紀委員会で、当時の委員長の井ノ本知明前総務部長が「問題ない」と押し切った。
知事や告発文書に名前が挙がった井ノ本氏が処分にかかわった点も問題視されている。
斎藤氏は懲戒処分について「公益通報前の文書配布行為を含め職務専念義務違反など4つの非違行為に関するもの。あとから手続きをしても遡って保護されるものではなく、処分は適切だった」との説明を繰り返している。
証人尋問では、告発文書で指摘された贈答品の受領についても問いただす。5日に出頭する原田剛治産業労働部長は、地元企業からPRのためにコーヒーメーカーなどを受け取ったことを認めている。
職員アンケートでは、斎藤氏本人が「視察先で土産のカニを職員の分まで持ち帰った」などの記載がある。斎藤氏の贈答品受領を巡る真偽や経緯も調べる予定だ。
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