今月8日に発生した日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震を受け、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表し、市町村に対し地震への備えを改めて確認してほしいと呼びかけました。

近畿地方の沿岸部で南海トラフ巨大地震による津波の浸水のおそれがあり、海水浴場のある大阪・和歌山・兵庫の21の市と町を取材したところ、3分の1にあたる7つの自治体で海水浴場を閉鎖し遊泳禁止とした一方、残りの自治体は津波への注意喚起にとどめました。

臨時情報の発表をめぐり国は海水浴場の規制について言及していませんが、南海トラフ地震の評価検討会の平田直会長は避難経路を確認しておけば海水浴を行っても問題ないという認識を示していました。

市町の対応が分かれたことについて、自治体の防災対策に詳しい滋賀大学の松原悠助教は「初めて出た情報で自治体は悩みながら対応し、おそらくどちらの判断をしてもある程度の批判というのは出てしまう状況だったと思うが、津波の到達時間や人口分布などそれぞれの地域事情を踏まえたうえで判断された結果としていろいろな対応が出てくるのは自然な結果だと思う」と指摘しました。

そのうえで、松原助教は「今後、海水浴客の声を聞くとか、実際に地震が発生した際に避難の誘導が間に合いそうなのかとか、具体的に考えていくことでよりよい対応につながると思う」と話していました。

各自治体の独自対応について

南海トラフ巨大地震が発生した際、近畿地方では最悪の場合、海水浴場のある21の市と町を含め大阪・和歌山・兵庫の合わせて47の自治体が津波で浸水するおそれがあり、臨時情報の発表を受けて独自の対応を取ったところもありました。

和歌山県のうち
▽湯浅町は地震の発生に備えて水門を半分閉め閉鎖時間を短縮できるようにしたほか
▽由良町は庁舎が津波の想定区域内にあるため公用車を高台に移動させました。

▽神戸市は上水道や工業用水をためておく量を増やしたほか
▽大阪 泉大津市は避難所の空調設備の状況を確認したということです。

各自治体に課題を聞いたところ
▽兵庫県淡路市は、多くの観光客から避難場所や経路について問い合わせを受けたことから、地域に詳しくない人たちに対する周知をあげていました。

また、
▽兵庫県高砂市は、防災計画に臨時情報が出た際の具体的な対応について記載がないため今後見直す予定のほか
▽大阪 泉大津市は、一部の交通機関が運休したことから帰宅困難者の対策の必要性を再確認したとしています。

▽大阪 泉南市は、海水浴客に対する避難に関する呼びかけを継続していくことを検討しているほか
▽兵庫県明石市は、防災意識の高まりで避難所の利用者が増えることが予想されるとして備蓄品の数量の見直しを検討するとしています。

自治体の防災対策に詳しい滋賀大学の松原悠助教は「臨時情報が発表されたことでそれぞれの自治体が頑張って考え、行った対応がたくさんあったと思う。こうした対応を共有していくことは今後の防災対応を改善していくうえで、大変重要だ」と指摘しました。

そのうえで、松原助教は「臨時情報には日頃からの地震への備えを再確認する今回の「注意」とすぐに避難できる準備や事前避難を呼びかける「警戒」の2つのレベルがあることを意識し、対応を検討していくことも必要だ」と話していました。

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