各地の池でカメの仲間・スッポンが増えている。日本自然保護協会(中央区)が昨年行った「日本のカメ一斉調査」では、10年前と比べて4倍以上に増加していることが分かった。原因は不明というが、都内の池でも容易に見られると聞き、その姿を探した。

井の頭池の水面から顔を出すスッポン=三鷹市で

◆井の頭公園では観察会を開催

アメリカザリガニを捕獲するわなに掛かった大型のスッポン=三鷹市の井の頭池で

 JR吉祥寺駅に近い「井の頭恩賜公園」(武蔵野市、三鷹市)の井の頭池で、都西部公園緑地事務所が6月下旬に主催したスッポン観察会。水面には絶滅危惧種の水草ツツイトモが広がる。前日に雨が降り、この日は晴天。案内役の認定NPO法人「生態工房」の事務局長佐藤方博(まさひろ)さん(51)から「こんな日にスッポンは水面に出てくる」との説明を聞きながら探索すると、すぐにツツイトモの中を泳ぐ甲長約20センチの個体を見つけた。鼻先が長く、他のカメと見分けやすい。  池に仕掛けたアメリカザリガニ捕獲用のわなにはスッポン3匹が入っていた。大きい個体は甲長約30センチ。参加した三鷹市の小学4年安藤想真(そうま)さん(10)は「大きい」と驚き、杉並区の小学2年鈴木絵麻さん(7)は「近くで観察できてよかった」と喜んだ。  この日に確認できたのは11匹。池では2013年度から17年度にかけ、池の水を抜いて池底を天日で干す「かいぼり」が3回にわたって実施された。佐藤さんはスッポンは数百匹いるとみる。「かいぼりによって水質が改善され、食べ物となる水生生物が増えたことが大きい」と説明する。

◆皇居、清澄庭園、有栖川宮記念公園などでも

策の池のスッポン(左と右手前)=新宿区で

 他の池はどうか。7月上旬に「策(むち)の池」(新宿区)を訪ねたところ、30センチの個体を確認。「清澄庭園」(江東区)の池でも30センチサイズが甲羅干ししていた。昨年8月に「有栖川宮(ありすがわのみや)記念公園」(港区)の池で外来生物の駆除作業を取材した際は5センチほどの幼体が捕獲された。皇居外苑濠(ぼり)(千代田区)でも目撃されている。  日本のカメ一斉調査は昨年7月から3カ月かけて実施された。市民がスマホで撮影して投稿する手法で、2529件のデータが集まった。確認された個体は3181匹で、このうち集計対象は2147匹。内訳はミシシッピアカミミガメ55.3%、クサガメ17.8%、スッポン13.7%、ニホンイシガメ8.8%だった。なお、日本には固有種のニホンスッポンと外来種のチュウゴクスッポンが生息しており、外部形態は同じで解剖して骨格を調べないと識別できないため、調査では合わせてスッポンとしている。

◆増えた原因「検証するのが難しい」

アメリカザリガニを捕獲するわなに掛かった大型のスッポン=三鷹市の井の頭池で

 そのスッポンは03年調査の2.3%、13年調査の3.1%から大きく増えた。報告書によると、03、13年には関東平野西部、大阪平野、濃尾平野で多く見つかったが、23年にはそれに加え、関東から東海にかけての太平洋岸、瀬戸内、九州でも多く見つかり、生息地の拡大がみられるという。
 調査を監修した矢部隆・日本カメ自然誌研究会代表(理学博士)にスッポン増加の原因を聞くと「原因は分からない」とした上で、二つの仮説を挙げた。「一つはサギ類やブラックバス、アライグマといった天敵の減少。二つ目はチュウゴクスッポンが増えているとの見方。ただ、どちらも検証するのが難しい」

清澄庭園の大泉水(池)にいるスッポン=江東区で

 ◆文・桜井章夫/写真・田中健、桜井章夫  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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