北海道北部の日本海側に浮かぶ天売島は、毎年3~8月に8種数十万羽が集まる世界有数の海鳥の繁殖地だ。貴重な環境を守ろうと、対岸の羽幌港近くにある「北海道海鳥センター」は来場者に関心を持ってもらうための工夫を凝らす。遊び心を交えた展示に加え、環境破壊の深刻さも問題提起。担当する羽幌町町民課の石郷岡卓哉さん(50)は「鳥が生きる環境と、人の生活との結びつきに目を向けてほしい」と話す。(共同通信=羽場育歩)
島は1周約12キロ。鳴き声からオロロン鳥とも呼ばれる絶滅危惧種ウミガラスの、国内では唯一の繁殖地だ。ウトウやウミネコの姿も多い。6月中旬の夕方、海から巣に戻る鳥たちの姿に、観光客から感嘆の声が上がった。東京から訪れた60代の男性は「ここだと自然のままの姿を見ることができる」と満足げだった。
センターは体験型の展示にこだわる。「わたしはウミウ。体重は3キログラムあるよ。飛ぶのはちょっとにがてなの」。同じ重さのぬいぐるみにはかわいらしい説明が添えられる。海鳥が営巣する島西部の絶壁のジオラマが設置されているほか、町で聞くことができる鳥の鳴き声を紹介するコーナーは、季節ごとに内容を入れ替えている。
石郷岡さんは横浜市出身。自然保護団体での勤務を経て職員となった。幼少期に教育施設「横浜自然観察の森」に通い、常駐する日本野鳥の会のレンジャーに「生き物は捕るものではなく見るもの」と、命の大切さを教わったのが原点だ。
子どもが喜びそうな展示に交じり、一角には海岸で回収された漁具や人形が並ぶ。鳥が漁具で傷つき、保護されることもある。海に捨てられたごみがマイクロプラスチックとなり、有害物質を吸着すれば、やがて食物連鎖で人間の体内に取り込まれる。「海鳥だけの問題ではない」と石郷岡さん。海鳥の楽園を守るためにも、興味の入り口となる施設を目指す。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。