横浜市教育委員会は、教員が児童や生徒への性犯罪で起訴された4件の事件の裁判で、2019年からことしにかけて、あわせて11回、一般の人が傍聴できないように職員を大量に動員していました。

この問題について、教育委員会がつくった3人の外部の弁護士による検証チームが関係者への聞き取りなどを行って報告書をまとめ、26日公表しました。

それによりますと、教育委員会は2019年に1件目の裁判について、被害者側を支援しているNPOから2次被害を防ぐためとして傍聴の要望があったことをきっかけに組織的な動員を行うことになったとしています。

しかし、2件目以降は被害者側の意向が十分に確認されたとはいえず、動員によって被害者の支援にあたる児童相談所の職員が傍聴できないケースもあったということです。

これについて報告書は「動員は公開裁判の原則を損ない、教育委員会の職務の範囲を逸脱する違法な行為だ」としたうえで、「被害を受けた児童生徒のプライバシー保護を図ろうとしたが、教育委員会の中だけで完結しようとして、さまざまな立場の関係機関と連携しようとする発想は乏しかった」と指摘しました。

一方で、関係者の聞き取りなどから、身内の擁護や不祥事の隠蔽が目的ではなかったと判断されました。

また、のべ414人の職員におよそ13万円の出張旅費が支払われたことについては、出張命令だったため職員に返還義務はないとしました。

検証チームの竹森裕子弁護士は、「教育委員会は裁判の公開の趣旨について広い視野を持っていなかった。組織体制を変更するなど対応をとるべきだ」と話していました。

前教育長「考えが足りなかったと反省」

この問題で、当時の横浜市教育委員会のトップだった鯉渕信也前教育長がNHKの取材に応じ、組織的な動員を了承したことについて、「考えが足りなかったと反省している」と話しました。

報告書によりますと、横浜市教育委員会では2019年に1件目の裁判で、被害者側を支援しているNPOから2次被害を防ぐためとして傍聴の要望があったことをきっかけに、前教育長の了承を得たうえで、組織的な動員を行うことになりました。

これについて前教育長は、「大変悩ましい事案で、所管課も微妙な点があるのをわかっていたのではないか。裁判の傍聴をないがしろにするのはいかがなものかとは思ったが、児童が特定されるのではないかという保護者の心配は理解したので受け入れることにした」と話しました。

そのうえで、加害者の教員をかばう意図はまったくなかったと説明しました。

また組織的な動員の法的な妥当性について、法務部門への確認をしなかったことを明らかにし、「法令に抵触しているというところまで、正直なところ考えが至らなかった。確認しなかったのは振り返って考えるとミステイクだった」と述べました。

さらに、2件目以降の裁判での組織的な動員については、「同様のやり方をします」と簡単な報告を受けただけで、了承したということです。

一連の組織的な動員について、前教育長は「私のレベルまで報告が上がって議論して意思決定しているので責任は私にある。被害を受けた児童が受けるかも知れないダメージを回避したかったが、改めて考え直してみると考えが足りなかったと反省している」と話しました。

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