なぜ室内で?

総務省消防庁によりますと、去年(2023年)5月から9月までに熱中症で搬送された人は全国で9万1467人。発生場所別でみると、庭などを含む住居が3万6541人と最も多く、全体の4割を占めています

また、東京都監察医務院によりますと、東京23区では去年6月から9月までに熱中症で死亡したのは少なくとも164人。このうちの8割以上を高齢者が占めています。

屋内で倒れていた人は148人で、このうちエアコンが動いていたケースは13人。不明の2人を除く133人はエアコンがなかったか、あっても動いていませんでした。

帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター 三宅康史 センター長
「住宅内でも温度や湿度は上昇する。特に近年は夜も暑いため日中の蓄積された疲労がリセットされず、熱中症を発症しやすい。特に高齢者は、基礎代謝が低くなり暑さへの感覚が鈍るため、エアコンをつけずに過ごし、知らないうちに熱中症になる人が多い。持病も相まって発症するケースもある。特に1人暮らしの場合は周囲にも気づかれにくく、重症化しやすい」

室内熱中症を防ぐ 6つのポイント

こうした室内での熱中症のメカニズムや対策について、日本気象協会はホームページで6つのポイントを紹介しています。

▼温度計や湿度計を設置し温度と湿度を気にする
▼エアコンや扇風機で室内の温度を下げる
▼こまめな水分補給や適度な塩分補給や休憩
▼バランスのよい食事やしっかりとした睡眠で生活リズムを整える
▼適度な運動や湯船での入浴で体を暑さに慣れさせる
▼自分も家族も熱中症になるかもしれないとお互いに気にかける

三宅康史 センター長
「特にリスクが高い高齢者は、温度計や湿度計を部屋に設置することで、まずはエアコンをつける行動につなげてもらいたい。家族や近所の人、行政や訪問介護事業者などによる声かけも大切だ。水分や塩分の補給も重要だが、心臓病や高血圧など持病により控えなければいけない人もいるので、かかりつけ医と相談しながら対策を講じていくのが望ましい」

エアコンのお得な使い方は?

室内での熱中症を防ぐために欠かせないのが「エアコン」です。ただ、最近は電気代も値上がりしたので、「使いすぎが心配…」という方も多いかもしれません。

そこで、大手電機メーカーのパナソニックで、エアコンのプロとして活動するエアーマイスター・福田風子さんに、「お得な使い方」を聞きました。

Q:おすすめの「お得な使い方」はありますか?

エアーマイスター・福田風子さん
「一番おすすめしているのは、設定温度を下げすぎずに、風量をアップすることです。エアコンは『外気温』と『設定温度』の差が大きいほど『消費電力』が大きくなって、電気代も上がってしまうので、消費電力を抑える省エネな使い方が重要です。例えば、設定温度を26度にしている人は、1度あげて27度にすると、消費電力を13%抑えることができます。暑いと感じる場合には、『風量』を強くして風が体に当たるようにすると、体感温度を下げられるのでやってみてください」

Q:『つけっぱなし』がお得だと聞いたことがありますが、どうなんでしょうか?

エアーマイスター・福田風子さん
「同じ時間使うなら『つけっぱなし』がお得です。電気代がもったいないからと、部屋が涼しくなったらオフ、再び暑くなったらオンという使い方をする人もいますが、エアコンは部屋を冷やす際にもっとも電力を消費するので、この使い方は無駄な電力を使ってしまいます」

Q:とはいえ、24時間ずっと「つけっぱなし」という訳にはいかないと思うのですが、出かける時は?

エアーマイスター・福田風子さん
「最近、エアコンを24時間つけっぱなしだったり、長時間つけっぱなしの方が多い傾向があります。ただ、仕事に出かけて部屋にいない時につけっぱなしにするのは電気代がもったいないので、『1時間以上の外出』をオフにする目安にしてください。一方で、近所へのちょっとした外出で、短時間で戻る場合は『つけっぱなし』が良いです」

Q:寝る時も「朝までつけっぱなし」が良いと聞きますが、電気代はどのくらいかかるのでしょうか?

エアーマイスター・福田風子さん
「電気代は、契約する電力会社や使っているエアコンによっても異なるのですが、電気料金目安単価で計算すると8時間(22時~6時)の使用で約23円でした。3時間タイマーなどをかけて就寝する人もいますが、途中で暑くて目が覚めてしまうので、しっかり眠るためにもエアコンはつけっぱなしにしていただきたいです」

福田さんは、ほかにも、電気代を抑える「エアコン活用術」を教えてくれました。

(1)室外機に日陰をつくる
室外機が直射日光を浴びると消費電力があがってしまいます。よしずをかけたりすると良いそうです。

(2)2週間に1回はフィルター掃除
フィルターが目詰まりすると空気を吸い込むために余計な電力を消費してしまいます。年間で1万円くらい節約できるケースもあるそうです。

(3)カーテンを閉め直射日光を入れない。
カーテンやブラインドを閉め、窓の外にすだれをかけるのも効果的。部屋を暖めない、冷気を逃がさないことが大切。

福田さんは、エアコンを上手に使って熱中症を防いで欲しいと話していました。

エアーマイスター・福田風子さん
「最近の夏は昔と違って、窓を開けて風で過ごせばなんとか乗り切れるような暑さでありませんので、節電につながるポイントを使いこなして頂いて、我慢しない節電を心がけて、エアコンを活用いただきたいと思います」

(7月23日 ほっと関西・ニュースウオッチ9で放送)

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