ふるさと納税の仲介サイトが寄付者に特典ポイントを付与するのを禁止する総務省の方針に、サイトを運営する楽天グループが反発している。制度の本来の趣旨から外れ、利用者の囲い込み競争が過熱しているとして出てきたルール改正だが、撤回を求めて反対署名を募る事態に発展。故郷などを応援するはずだったふるさと納税は、どうあるべきなのか。(曽田晋太郎)

松本剛明総務相(資料写真)

 「ふるさと納税については返礼品目当てではなく、寄付の使い道や目的に着目して行われることに意義があると考えており、制度の適正な運用を確保する」。松本剛明総務相は6月25日の記者会見でこう述べ、2025年10月から寄付者にポイントを付与する仲介サイトの利用を禁じる方針を示した。  ふるさと納税は、都市部と地方の格差是正を目的に2008年に開始。寄付上限額を超えなければ、自己負担分2000円を除いた額が住民税や所得税から控除される。寄付総額は2022年度、過去最高の9654億円に上り、2008年度の81億円と比べると100倍以上に規模が拡大している。

◆自治体が払う手数料の一部がポイントの「原資」と問題視

 一方で、自治体間の返礼品競争が過熱し、格差是正どころか「勝ち組」「負け組」が生まれる問題も。仲介サイトに自治体が手数料を支払って返礼品を掲載し、利用者がネットショッピング感覚で選ぶことから、「官製通販」との批判もある。寄付で付与されたポイントは、一般の通販などでも利用できる仕組みとなっている。  総務省は今回、自治体が仲介サイト側に支払う手数料の一部がポイントの原資になっているとみて、ルール改正に乗り出した。規制で自治体に入るお金を増やす狙いがある。ある首都圏の自治体の担当者は「どれだけポイントの原資になっているかは分からないが、手数料が下がるのであればありがたい」と話す。

◆楽天グループは「各地域の努力を無力化する」と反発

 これに異を唱えたのが、「楽天ふるさと納税」を運営する楽天グループだ。総務省が制度の見直しを告示した先月28日、三木谷浩史会長兼社長名で政府に撤回を申し入れる声明を発表。「民間原資のポイントまでも禁止し、自治体と民間の協力、連携体制を否定するもので、各地域の自律的努力を無力化するものだ」と訴え、反対の賛同を募る署名をネット上で始めた。楽天側はポイント原資は自社で負担しているとし、署名は今月8日時点で100万件を超えたと発表した。

総務省の規制に対し、楽天グループは三木谷浩史会長兼社長名で政府に撤回を申し入れ、反対への賛同を求め、ネット上で署名を呼びかけた(同グループ公式サイトから)

 ポイントを巡る官民の対立をどうみたらいいのか。上智大の中里透准教授(財政学)は「ふるさと納税は寄付のスキーム(枠組み)。本来はどこかの自治体を応援したいという気持ちでやるはずが、今は仲介サイトを通じて通販のような感覚で利用され、ポイント還元率が高いところにお金が流れてしまう。もともとの制度の趣旨を考えれば、今回の総務省の見直しは妥当だ」と評価する。  その上で「ふるさと納税の普及のためにプラットフォームを作ったのであれば、ポイント禁止は当然のことと理解されるはずだ。ポイント付与は通販の発想で、ふるさと納税が寄付であり、返礼品の元手が税金であることが忘れられている」と指摘する。 

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