海洋研究開発機構や米航空宇宙局(NASA)などの国際研究グループは10日、小惑星「りゅうぐう」がかつて水にあふれた天体だった可能性があるとする論文を発表した。小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った試料を分析し、他の隕石(いんせき)に比べて水に溶けやすい物質の割合が著しく小さいことを明らかにした。かつてあった水に溶けたとみられる。地球の水の存在の起源などに迫る成果だ。
海洋機構の高野淑識上席研究員や九州大学の奈良岡浩教授、NASAのジェイソン・ドワーキン主幹研究員らの国際研究グループが、りゅうぐうの試料を詳しく分析して明らかにした。ジカルボン酸という有機物群がどれくらい含まれているかを探った。
この有機物群のうち「マロン酸」という物質の割合が、過去に地球に落ちた隕石の試料と比べて小さいことがわかった。マロン酸は水に触れると形が崩れて溶ける。1969年に地球に落ちたマーチソン隕石など他の隕石に比べてマロン酸の割合が著しく小さかった。水に溶けやすい物質の少なさは、りゅうぐうにかつて大量に水があったことの間接的な証拠になる。
原始的な地球には水は存在しなかったというのが研究者の一般的な見立てだ。その後に水を含む多数の小惑星が長期間かけて衝突し、海ができたとされる。
また、これまでの研究では生命の源になるアミノ酸や核酸塩基の存在などが報告されてきた。今回はさらにアミノ酸などの原材料となるピルビン酸と呼ぶ物質など84種も新たに見つかった。
りゅうぐうのような小惑星が水に覆われていたとすると、そこにあった生命の源が天体に乗って宇宙から地球へ飛来した可能性が高まる。高野上席研究員は「これまでは仮説として考えられてきたが、今回そうであるという証拠の一端が示せた」と話す。
今後、米国の探査機「オシリス・レックス」が持ち帰った小惑星ベンヌの試料の分析結果と照合する。今回の成果が地球付近の小惑星の状態を示すのか、りゅうぐう独自の進化の過程を示すのかを明らかにしたい考えだという。研究成果は英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」(電子版)に掲載された。
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