◆都教委は「公務を希望する人に広く機会を与えるため」と説明
「卒業するまでいてほしかった」「いなくなったら困る」。都SCの公募試験で不合格だった女性は、3月でいなくなると生徒たちに伝えると、このような言葉をかけられた。雇い止め撤回を求めるオンライン署名に協力する保護者もいた。2015年度から働き、同時に3校を任されたこともあった。「自分が大事に築いた環境を終わりにしないといけないのは、苦しかった」と振り返る。東京都のスクールカウンセラーだった女性。公募試験の結果、2024年度は採用されなかった=東京都内で(川上智世撮影)
都SCは1年ごとに任用され、都教育委員会は公募によらない再任用の回数を4回までと規則に定める。女性は2023年度に更新の上限に達したため、新しく職に就くことを希望する人と同じ公募試験を受けなければいけなかった。都教育庁の徳田哲吉職員課長は公募にかける理由を「公務を希望する人に広く機会を与えるため」と説明する。◆勤務実績を評価して再任用を判断する自治体もある
総務省によると、公募によらない再任用の回数に制限を設けるかは自治体が決める。制限がない自治体も一部あり、このうち世田谷区は理由を「職員の意欲や能力をさらに活用できるようにするため」とし、文京区は「職員の雇用の安定と、労働組合による要望」と説明する。所属長が勤務実績を毎年評価して再任用を判断し、現職を一律公募にかけることはしない。世田谷区は、再任用しない職員には人事評価を開示し、不服を申し立てられる制度の説明をするという。 自治体の判断次第で非正規職員の雇用環境は変わる。労働組合「心理職ユニオン」(東京都豊島区)は都SCの雇い止め問題で、都知事選の主な候補者5人に公開質問状を送った。 雇い止めされた都SCの復職を求める質問に対し、現職の小池百合子氏(71)は「賛同できない」と回答。タレントの清水国明氏(73)や元航空幕僚長の田母神俊雄氏(75)、前参院議員の蓮舫氏(56)は「賛成し実現を目指す」とした。前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)からは期日までに回答はなかった。◆雇い止めに遭った女性は「安心して相談できる環境を現都政が壊した」
都知事選で非正規職員問題の論戦は、蓮舫氏が正規化を訴えているのが目立つ程度で活発とは言い難い。雇い止めされた女性は都政に対し「生徒や保護者が安心して相談する環境を壊した」との思いがある。 これまで、いじめや虐待で悩む生徒らを臨床心理士の資格を持つ専門家の立場から支援してきた。やっと心を開いた生徒らが相談していたSCがいなくなることで声を上げにくくなる影響を懸念する。「雇い止めが起きないようにしてほしい」。そう願っている。東京都スクールカウンセラーの「雇い止め」問題 非正規公務員の新しい人事制度(会計年度任用職員制度)が2020年度に導入されたことを受け、2019年度以前から勤務していた人が2024年度に契約更新して働くためには公募試験に合格しなければならなくなった。都教育委員会などによると、契約更新のため試験を受けたのは1096人。1月時点で、補欠に当たる補充任用や不合格で2024年度に採用されない「雇い止め」は250人に上った。新規応募者783人のうち合格者は441人。更新回数の制限に達しないため、公募を受けずに契約更新をしたのは420人だった。
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