今野被告の法律事務所のホームページ(※現在は削除)

起訴されたのは、弁護士で元衆議院議員の今野智博被告(48)や職業不詳の辻直哉被告(51)ら3人です。

捜査関係者によりますと、今野弁護士は、弁護士資格を持たない辻被告らのグループに自身の弁護士の名義を使わせ、投資詐欺の被害者を相手に法律事務をさせたとして弁護士法違反の罪に問われています。

警視庁のこれまでの捜査で、東京・港区にあったグループの拠点から電話での応対マニュアルが押収されたことが捜査関係者への取材でわかりました。

マニュアルには、弁護士事務所のスタッフを装って「元国会議員の肩書きを強調する」とか、「受け取りたい額の2倍程度を最初に提示して、そのあと値引きする」といった着手金を受け取るためのポイントが書かれていたということです。

警視庁は今野弁護士と辻被告らのグループが詐欺の被害者およそ900人から着手金合わせて5億円を不正に受け取っていたとみてさらに調べを進めています。

詐欺被害回復の着手金が…

詐欺の被害金を取り戻そうと、法律事務所のサイトから相談し、着手金を払ったのに対応してもらえないという30代の男性が取材に応じました。

男性はことし3月、SNSでFXや暗号資産への投資を勧められ、200万円を出資しましたが、その直後から資金が引き出せない状態になり、詐欺の被害に遭ったことに気づいたといいます。

そこで、弁護士に相談しようと、インターネットで「投資詐欺」や「弁護士」などと検索し、今野弁護士が「共同受任先弁護士」として記された法律事務所を見つけました。

サイトには「被害回復の実績」や「被害回復までの流れ」などが書かれていて、男性が案内に従って登録を進めると、LINEのメッセージでのやりとりに誘導され、詐欺の内容や被害金額、いつごろ被害にあったのかなど具体的な状況を伝えました。

すると、事務所の男性スタッフから電話があり、詐欺の相手方の口座の凍結など被害回復までの流れについて説明されたということです。

「早く契約したほうが被害回復の可能性が高くなる」とも言われたといい、男性はすぐに契約。着手金として24万円余りを払いました。

これまでのやりとりに弁護士は1度も登場しなかったといいます。

その後は「凍結した口座の残高がまだ公表されていない」とか、「被害回復までまだ3、4か月かかる」などという報告がメッセージで数回あった程度だということです。

今野弁護士の逮捕を知った男性が事務所に電話したりメッセージを送ったりしましたが現在、連絡が取れない状態だということです。

着手金を支払った男性
「投資詐欺の被害に遭い、頼れるところは弁護士しかなかったので憤りを感じました。一番の思いとしてはお金を返してもらいたいです」

どんな回答にも「お金取り戻せる可能性」

現在は削除されている今野法律事務所のホームページ画面です。

「詐欺被害の返金は弁護士にお任せください」と書かれ、無料の「返金請求診断」で依頼者を募っていました。

詐欺被害に遭った時期や方法、被害額を入力する形式でしたが関係者によりますと、どんな回答をしても「お金を取り戻せる可能性がある」という診断結果が出たということです。

ホームページには「警察だけに任せた場合、事件は解決しても詐欺被害の回復は望めない」とも書かれていて、フリーダイヤルで相談するよう求めていました。

押収されたマニュアル 内容は

グループが拠点にしていたビル

捜査関係者によりますと、このフリーダイヤルは弁護士事務所ではなく、逮捕されたグループが拠点にしていた東京・港区にある雑居ビルにつながる設定になっていました。

警視庁が押収した応対マニュアルには、電話に出る際には「今野法律事務所の○○です」と名乗ることや、着手金を受け取るまでのやりとりのポイントが書かれていました。

中には「2倍くらいの額を提示できるかが大事。いったん大きく振ったあとに、ドカッと値引きすれば大抵決まる」などと書かれ、例えば、被害金500万円を回収する場合には、最初に「着手金は125万円かかります」と言って反応を見たあと「うちの事務所は被害回復に重点を置いているので75万円でどうですか」などと持ちかけるということです。

また「うちの先生は元国会議員で、信頼できます」などとかつての肩書きを強調するよう指南していましたが、「絶対に取り戻せる」とは言わず「取り戻せる可能性が高い」という表現にとどめていて、詐欺罪に問われないようしていたとみられます。

弁護士会に150件の相談

逮捕を受けて、今野弁護士が所属する埼玉弁護士会が依頼者を対象に相談窓口を設置したところ、6月17日から7月1日までに全国から150件の相談が寄せられたということです。

埼玉弁護士会は「警視庁の捜査を注視しつつ、今野弁護士についての適切な処分を検討していく」としています。

消費者窓口にも相談 相次ぐ

「詐欺の被害金を取り戻すことができる」というインターネットの広告などから弁護士に相談して高額の着手金を払ったのに対応してもらえないといった相談が東京都の消費者窓口に相次いでいて、昨年度は53件と過去5年間で最も多くなりました。

今年度は6月中旬までの2か月余りの間に26件と昨年度を上回るペースで寄せられているということです。

東京都消費生活総合センター 高村淳子相談課長
「『すぐ対応しないと逃げられる』などと、契約を急がせるような弁護士がいたら慎重になってほしい」とした上で、「不審に思った場合は消費生活センターに相談してほしい」

また、各地の弁護士会でも相談窓口を設けていて、弁護士事務所とトラブルになった場合には相談するよう呼びかけています。

SNS勧誘きっかけ 詐欺被害 急増

警察庁によりますと、投資に関心を持つ人が増える中、SNSでの勧誘をきっかけに投資名目などで現金をだまし取る詐欺の被害は、ことし、5月末までに全国でおよそ548億円に上り、前の年の同じ時期に比べ5倍以上に急増しています。

このうち、投資家や著名人をかたるなどして投資に勧誘する「SNS型投資詐欺」の被害は3049件、被害総額は430億円に上り、前の年の同じ時期に比べ380億円増えています。

年齢別では、▽60代が28%と最も多く、次いで▽50代が26%、▽70代が17%でした。

被害額では、500万円以下が半数近くを占めていますが、中には1億円以上をだまし取られた人もいます。

また、SNSでのやり取りで恋愛感情などを抱かせて金銭をだまし取る「SNS型ロマンス詐欺」の被害は1148件、被害総額は117億円と、前の年の同じ時期に比べおよそ2倍になっています。

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