東京女子医科大学では、ことし3月に、同窓会組織「至誠会」の経理処理をめぐる特別背任の疑いで警視庁の捜索を受けたほか、「至誠会」への寄付額を卒業生の教員の人事で考慮していたほか、「至誠会」が審査し推薦する入試において寄付額を申告させていたことが分かり、文部科学省は大学に対し事実関係の報告を求めています。
これを受け、2日は東京女子医科大学病院に勤める教授など医師7人が文部科学省を訪れ、現状を説明しました。
この中では、警視庁の捜索や寄付をめぐる件で「社会における信頼を著しく損なっている」としたうえで、捜索を受けて行われた教職員を対象にした説明会で責任の所在について明確な回答がなく、教員人事や推薦入試についても法人から説明されていないと報告したということです。
そのうえで、文部科学省による大学への適切な指導を求めたということです。
東京女子医科大学の新浪博教授は「どうしても大学を改善したいと考えて陳情した。今後は、大学が設置した第三者委員会の報告や文部科学省の対応に期待したい」と話していました。
文部科学省は、いずれの件についても大学が設けた第三者委員会で事実関係を確認するよう求めていて、「調査を踏まえた大学からの報告をもとに対応していく」としています。
推薦入試過程で寄付額を点数化か
東京女子医科大学をめぐっては、同窓会組織の審査が必要な推薦入試の過程で、受験生の親族からの寄付額を考慮していたという情報を受け、文部科学省が事実関係の報告を求めています。
大学などによりますと、東京女子医科大学では同窓会組織「至誠会」に入っている卒業生や在校生が3親等以内の親族にいる受験生を対象に、至誠会が審査を行って推薦する入試が2018年から実施され、毎年、会の審査で選ばれた10人前後が大学の推薦入試を受けたということです。
関係者によりますと、この推薦入試の過程で、至誠会に提出する「審査依頼書」に、受験生の親族による大学や至誠会への寄付や預託金、活動実績を申告する欄があったということです。
至誠会で保管されていた資料には、これらが「貢献度」として点数化されていて、大学や至誠会への寄付5万円に対し0.1点、会合などへの参加1回あたり0.5点となっていて、審査の際に筆記試験、面接などの合計点に加算されていたということです。
大学関係者の1人は「受験生の親族から、『至誠会の幹部にさらに寄付に協力できるか確認された』と聞いた」と話しています。
文部科学省は、公正な入試の実施のため、入学に関して寄付を募ることを通知で禁じていて、文部科学省によりますと、2019年に入試の選考過程で寄付額が考慮されているという情報提供を受けて確認した際は、大学側は「そのような事実はない」と否定していたということです。
文部科学省は、再度、通知に反するかどうか確認するため、大学に事実関係を調べて報告するよう求めています。
東京女子医科大学は「特定の個人に対し寄付を求めた事実はなく、文部科学省の通知に違反している認識はない」とコメントしています。
教員の採用や昇格でも寄付額を評価の対象に
また、卒業生の教員への採用や昇格にあたり、同窓会組織「至誠会」への寄付額を、評価の対象にしていたことが明らかになっています。
文部科学省や関係者によりますと、東京女子医科大学では、2018年6月から去年まで、卒業生が教員への採用や昇進を申し出る際に「至誠会」での活動状況をまとめた報告書の提出が義務づけられていたといいます。
報告書には、至誠会への寄付の実績や会合などへの出席回数が記載され、
額や回数を点数化したうえで、その合計を「非常に良い」から「普通」「非常に悪い」までの5段階で評価する仕組みだったということです。
至誠会の内部資料ではその基準として、寄付10万円につき0.5点、会合の出席1回で0.5点などと記されていて、実際に提出されたある報告書では、寄付20万円に対し「1点」と記されています。
また、報告書の発行手続きを周知した際の通知の留意事項には「寄付などの状況を鑑み、活動が認められない場合は評価に影響いたします」などと記されていました。
関係者の1人によりますと、昇進を考える教員のもとに会の理事などから「点数が少し足りない。寄付金でまかなう方法もある」などと、金額を提示して寄付を求める電話もあったといい、関係者は「昇進のためになかば強制的に寄付をさせられた教員もいると思う。能力で公正に評価されるべきだ」と話していました。
一方、東京女子医科大学は「公益性のある活動をしている至誠会への寄付を社会貢献活動として積極的に評価してきたが、寄付を強いる行為は確認されていない」とコメントしています。
警視庁が特別背任の疑いで捜査
東京女子医科大学をめぐっては、同窓会組織「至誠会」から勤務実態のない職員に給与およそ2000万円が不正に支払われたとして、警視庁がことし3月、特別背任の疑いで大学本部や、岩本絹子理事長の自宅などを一斉に捜索し、現在も捜査を進めています。
捜査関係者によりますと、この職員は、岩本理事長が経営する産婦人科クリニックの元従業員で、在籍当時、理事長の秘書業務などを担っていたということです。
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