女性の視点を取り入れた災害対策を強化するため、内閣府は2021年から全国の自治体を対象に防災担当部署の女性職員の割合を調査しています。

3回目の今回は能登半島地震への対応で回答が難しいとした石川県の輪島市、穴水町、能登町を除く1738の市区町村から去年12月時点の状況について回答を得ました。

それによりますと、全体の57.4%にあたる997の自治体で、女性の職員が「ゼロ」と回答したことが分かりました。

前々回2021年の調査の61.9%、前回2022年の61.1%よりは若干の改善傾向がみられるものの、依然として半数以上の自治体に上っています。

防災担当部署に女性の職員がいない市区町村の割合を都道府県別にみると、
▽長野県が84.4%と最も高く、
▽岡山県が81.5%、
▽岩手県が78.8%、
▽大分県が77.8%、
▽山梨県が74.1%でした。

また、市区町村の防災担当部署にいる女性職員の割合は全国平均で11.5%と、1割ほどにとどまっています。

今回の調査では、市区町村の災害対策本部会議に出席する幹部クラスの女性職員の割合の調査も行われ、全国平均で9.5%にとどまることも分かりました。

内閣府は「災害時の意思決定の場に女性が少ないことで、女性をはじめとした多様なニーズが反映されにくくなるおそれがある。首長や管理職などを対象としたセミナーなども通じて女性の参画の重要性をさらに訴えていきたい」としています。

専門家「配置進むもペース遅いのでは」

今回の調査結果について、災害とジェンダーについて詳しい静岡大学の池田恵子教授は「自治体は危機管理担当部局に女性を配置することを確実に進めている。ただ、地域コミュニティーや災害ボランティア団体などで女性が活躍する場面は増えてきていて、それらと比較するとペースが遅いのではないか」としています。

また、人口規模が小さい自治体で女性職員がゼロの割合が多いとして「小さな規模の自治体ではそもそも危機管理担当部署の職員数が非常に少ないとか、業務を兼務しているといったことがかなりある。女性の配置が難しいようであれば、危機管理担当ではない部署で女性の職員と連携していくやり方も考えていくべきだ」と指摘しています。

池田教授によりますと、ことし1月の能登半島地震では、避難所で女性用の物資を男性が配っていたことで、女性が下着などをゆっくり選べないケースがあったということです。

池田教授は自治体の職員が避難所などへ派遣される際も、トイレや寝泊まりする環境を理由に女性は配置できないとの認識が根強いとしたうえで「仮眠室を男女別に作ったり、職員の子どものケアを行政が行うといった対策を取ったりすることで、男女問わず活躍しやすくなるのではないか」として、先入観を持たずに対策を実践することが重要だと話しています。

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