ローカル鉄道・秋田内陸線阿仁合駅(秋田県北秋田市)の一角に「社長とお話しませんか」と記されたボードがある。同線を運営する第三セクター「秋田内陸縦貫鉄道」は、利用客が吉田裕幸社長(61)を呼び出し、気軽に話せるサービスを実施中だ。「旅の思い出の1ページになれば」と願う。(共同通信=添川隆太)
秋田内陸線は鷹巣(北秋田市)―角館(仙北市)間の94.2キロをつなぐ。阿仁合駅の窓口で社長に会いたいと伝えると、近くの本社から数分で駆け付ける。
ボードには「すごくヒマ」「忙しい」「お出かけ中」といった社長の状態が示されている。対応できない場合、課長や係長が対応することも想定している。
吉田社長は「100円ショップで買ったボードですけどね」と笑う。社員の発案で今年1月に始めた。10~70代の男女10人ほどが利用し、おすすめの風景やお土産、車両の特徴について話をしたという。
内陸線は沿線の人口減少により経営が厳しい。新型コロナウイルス禍による打撃も大きかった。自治体からの補助金は今後減額される見通しだ。
駅や車両を利用したコスプレ撮影会、フォトウエディング…。生き残りに向け、さまざまな企画を打ち出している。昨年始めた「応援社員」は「社員」「課長」「部長」の階級があり、登録料を支払うと社員証をもらえるなどの特典がある。阿仁合駅で実際に打刻ができるタイムカードも配り、交流サイト(SNS)での共有につなげ、広報の役割を担ってもらう狙いだ。
吉田社長は「ローカル線が元気になれば、その地域が元気になる。まだまだ可能性があると思うので、一つずつ、できることをやっていきたい」と話し、未来を見据えている。
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