◆病院や薬局での声かけ、半数が体験
アンケートは15~19日に実施、男女538人から回答があった。 薬局や病院で「マイナンバーカードはありますか」などとマイナ保険証の利用を勧められた経験がある人は219人いた。 利用を勧められた人のうち半分近い101人が、診察を受けたり、薬をもらったりするのにマイナ保険証が「必須だと感じる」ような説明だったと答えた。◆10人に1人が「必須」と勘違い登録
101人のうち半数ほどは、実際は必須ではないことを知っていたため、勘違いすることはなかったという。しかし、47人は声かけによって必須だと勘違いしていた。 47人のうち20人は、マイナ保険証に登録していた。つまり、病院や薬局で利用を勧められた人のうち、10人に1人は必須と勘違いして登録していたことになる。 東京都50代女性は、窓口での対応について「マイナ保険証に変えないと使えなくなるととらえられる、あやふやな説明を受けた」と明かした。 誤って登録した人からは、次のような不満の声も寄せられた。 「マイナ保険証を使う利点が分からない。希望する人は紙の保険証は残すべき」(千葉県70代以上男性) 「マイナ保険証の読み取りが遅くて不便」(埼玉県60代男性)◆「使いたくない」受診あきらめた人も
必須と勘違いした人の中には、受診や処方をあきらめた人もいた。回答した神奈川県の20代女性は、情報漏えいへの不安や病歴や薬歴を明かしたくないなどの理由からマイナ保険証の登録を拒んできた。 この女性は、窓口での声かけを「適切ではない」とし、「(マイナ保険証を)使いたくない。なんでも紐付けしないでほしい」と訴える。 必須だと受け止めた47人のうち、残りの26人はマイナ保険証に登録済みだったため持っていたマイナ保険証を使ったと答えた。◆声かけ「不適切」8割以上
アンケートでは、政府が推奨する声かけについて「適切ではない」と答えた人は84%。「どちらかといえば適切ではない」を含めると95%に上った。 厚労省が用意した声かけの「台本」やチラシには、12月2日で現行の保険証が廃止されても、マイナ保険証を持っていない人は当面、資格確認書で代用できるといった説明もない。 病院や薬局で利用を勧める声かけに対し、これまで「マイナ保険証を強制されているよう」といった戸惑いの声が東京新聞にも寄せられていた。今回のアンケートでも、マイナ利用に偏った声かけを勧める政府の姿勢を疑問視する人の多さが浮かんだ。厚労省が用意した声かけの「台本」の一部
▽最初のお声がけ⇒「マイナンバーカードをお持ちでしょうか?」
▽カードを持参していなければ ⇒「マイナンバーカードを保険証として利用いただけます。次回来局時はぜひお持ちください」
▽カードを作成していなければ ⇒「2024年12月2日に現行の健康保険証の発行が終了します。まずはぜひ、お早めにマイナンバーカードの作成をお願いします」
◆声かけに「脅迫的」「詐欺のよう」
アンケートには、実際に声かけを受けた人から抗議の声があった。 「十分な説明なく保険証がなくなると脅迫的な声かけをされたこと自体が不快だった」(青森県30代男性) 「マイナカードと保険証の紐付けを法律で決められているかのような説明をしている様子にいつも、高齢者の無知を利用して詐欺のようだなあと感じていた」(福岡県70代以上女性) 「なぜ現行の保険証が、任意のはずのマイナンバーカードに変更が奨励されているのか、不安と憤りを感じています」(東京都50代女性) すでにマイナ保険証を利用している人からも疑問が投げかけられた。 「積極的にマイナカードを使用しています。しかし、任意にもかかわらず、マイナカードを促す薬局に違和感を持っています」(神奈川県50代男性)◆「カネで釣る」政府に不信感
政府は5月から、利用促進のため、利用者が増えた病院や薬局に見返りとして、最大20万円の支援金の支給を始めた。それでも利用は伸び悩んでおり、政府は6月21日、支援金の上限を最大40万円に倍増することを発表。さらなるバラマキに踏み出した。 アンケートでは、カネで病院や薬局を普及に駆り立てる政府の手法に、批判の声が目立った。 「とにかくお金で釣ろうとしているイメージしかない。マイナ保険証にすればお金がもらえるという発想自体が不公平で行政の仕事として相応しくない」(大阪府50代男性) 「金で強引に物事を進めるやり方は、民主主義に反するから反対!」(千葉県70代以上女性) 「莫大な税金をかけて取得を促し、作った人に対して作らない人より優遇するような政策は全く受け入れられません」(東京都60代女性) 「無理やり期限を作り、強制執行される感のあるマイナ保険証。今の政府には不信感しかないため、応じたくない」(東京都50代女性)◆「医療機関のせいにされているよう」
利用促進に駆り立ててられている医療関係者からも戸惑いの声が…。 東京都70代以上の女性は、政府の普及策に「マイナ保険証の利用が少ないところに指導的な圧力をかけているように感じます。色々トラブルがあって利用が伸びないのに、医療機関側のせいにされてるよう」と受け止める。 その上で、現行の保険証の存続を訴える。「たった20万くらいのお金で毎日の業務は増え、言われる患者さんも自分が悪いという感じになりかねない。最低、保険証は残せて、各自の判断で選択できるようになってほしい」政府のマイナ保険証の普及策 厚労省はマイナ保険証の利用促進のため、217億円を計上。利用者が増えた病院や薬局に見返りとして、当初は最大20万円の支援金を支給するとしていた。ところが利用は伸びず、さらなるテコ入れのため、支援金の上限を倍増することになった。窓口での声かけやチラシの配布、ポスター掲示が条件。政府は12月2日で現行の保険証の新規発行を停止する方針だが、マイナ保険証の利用率は5月時点で7.73%にとどまっている。
◇ アンケートに答えた人のうち、2人に詳しく話を聞いた。◆一方的な現行保険証廃止「強引だ」
福岡市の60代男性会社員は、大手薬局で「マイナ保険証をお使いじゃないですか」と若い窓口の職員に聞かれた。マイナンバーカードの取得は任意だと知っていたため、なぜそんなことを聞くのだろうと疑問に思い、「なんで?」と聞き返した。 すると、職員は何も言わず黙り込んだ。 男性は「ただそう聞くように指示されて、その通りやっているだけで、理由を答えるだけの知識はないんだろうなと思った」と話す。 男性はマイナ保険証に登録しているが、現行の健康保険証を使うようにしている。理由は政府への不信感からだった。 「政府が一方的に健康保険証の廃止を決めて、強引な印象を受けた」 政府は薬局や病院への支援金を増額し、さらなる普及を図ろうとしている。男性は「利便性が高いなら、インセンティブ(報奨)がなくても広がると思うが…」とこの対応にさらに不信感を強めている。病院に設置されたマイナ保険証の読み取り機=名古屋市で、2023年7月撮影(一部画像処理)
◆任意のはずが…「半ば強制おかしい」
緑内障で通院している川崎市の50代の会社員男性は4月、薬局の窓口で「マイナンバーカードを提示してください」と言われたという。昨年末までの通院ではそのような声かけはなく、「あまりにも当然のように言われたので、提示が必須なのかと思った」と振り返る。 男性はマイナポイントが付与されるキャンペーンをきっかけにマイナ保険証を登録しており、言われるがままにマイナ保険証を利用した。だが、「任意であるはず」という意識はあった。 「半ば強制と取られるような言い方をするのはおかしい」と、現在の政府の普及策に疑問を投げかける。 「使いたい人から使って、自然に広がっていくのが普通じゃないですか。急に広めようとすることではない」と批判した。(戎野文菜)▶マイナ保険証に関する窓口は
東京新聞ではマイナ保険証に関するご意見や情報を募集しています。メールはtdigital@chunichi.co.jp、郵便は〒100-8505(住所不要)東京新聞デジタル編集部「マイナ保険証取材班」へ。
▶それ以外の情報提供の窓口は
東京新聞は、マイナ保険証に限らず、読者の皆さんの投稿や情報提供をもとに、本紙記者が取材し、記事にする企画「ニュースあなた発」にも取り組んでいます。身の回りのモヤモヤや疑問から不正の告発まで、広く情報をお待ちしています。東京新聞ホームページの専用フォームや無料通信アプリLINE(ライン)から調査依頼を受け付けています。秘密は厳守します。「ニュースあなた発」の詳細説明ページ。
【関連Q&A】薬局で「マイナカードお持ちですか」と聞かれたら…必須になったの?保険証は使えない?
【関連記事】マイナ保険証にイヤイヤ登録させ…「誤解与えた」大手薬局が謝罪文 「現行保険証を突き返された」抗議を受けて
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。