指定暴力団山口組・旧五菱会系ヤミ金業者の元メンバーら4人のグループが逮捕されたヤミ金事件で、同グループとは別に独自でヤミ金を営んだとして、警視庁生活経済課が11日、貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の疑いで、横浜市西区、元音楽教室主宰の伊藤輝代子容疑者(51)を再逮捕したことが、捜査関係者への取材で分かった。(小倉貞俊)

◆容疑者宅から携帯電話約100台、他人名義のカード数百枚を押収

 多重債務者のリストを使って法外な利息で金を貸し付け、返済時には他人名義の口座に振り込ませる手口。2018年11月~今年2月の約5年間で約750人に総額2000万円を貸し付け、約1800万円の利益を得ていたとみられる。  伊藤容疑者は、旧五菱会系ヤミ金業者の元メンバーで無職、針谷恭輔被告(44)=同罪で起訴=を主犯格とするヤミ金グループで、現金の「運び屋」を担っていたとして、針谷被告らとともに先月21日に同容疑で逮捕されていた。  捜査関係者によると、2月の伊藤容疑者宅の捜索で、針谷被告のグループとは別のヤミ金営業用とみられる携帯電話約100台、他人名義のクレジットカード数百枚などを押収。多重債務者としてグループに加担していた伊藤容疑者が、自身でもヤミ金業を営んでいたことが判明した。旧五菱会系ヤミ金業者が顧客情報を管理していた「センター」と呼ばれる部門から、針谷被告とは別のルートで、顧客名簿や他人名義の携帯電話・口座などを入手したとみられる。  再逮捕容疑では、21年8月~22年10月ごろ、貸金業の登録がないまま40代の男性ら2人に貸し付けし、法定金利の13~98倍となる超過利息計約88万円を他人名義の口座に入金させ、不当に得たとされる。同課は認否を明らかにしていない。   ◇

◆「自身もヤミ金被害者なのに…」

 再逮捕された伊藤容疑者は、8年ほど前まで別の名前で音楽家として活動していたが、多重債務に陥りヤミ金業に手を染めることになった。当時を知る複数の関係者は「まさかあの人が…」と絶句する。  関係者によると、伊藤容疑者は幼少期にバイオリンを、音楽専門の大学・大学院では声楽などを学んだ。都内で音楽教室を開く傍ら、演奏活動なども行っていたという。  ただ、伊藤容疑者に違和感を持つ人もおり、知人の1人は「収入に見合わない高額な楽器などを購入していた」と振り返る。  また別の関係者は「容疑者が音楽公演を主催した際、諸事情でキャストが降板したり、観客が集まらなかったりするトラブルがあった」と指摘。多額の出費に追われていた形跡があるという。  捜査関係者は「多重債務者となり、利息の肩代わりに運び屋などの闇バイトをやらされるうち、自ら犯行を主導するようになったのでは」と指摘。「自身もヤミ金の被害者のはずなのに、さらに被害を広げる『負の連鎖』になってしまった。悩んでいる人は公的な相談窓口などに支援を求めてほしい」と話した。 

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