マルチ商法をめぐるトラブルで、昨年度に寄せられた相談は、春から夏にかけての時期が多かったことが国民生活センターのまとめでわかった。4814件の相談のうち、5月が最多の523件で、6月、4月と続いた。年度初めで新生活が始まる時期に、新たな人間関係の中で勧誘活動が活発になっているとみられる。
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マルチ商法は、誰かを会員に勧誘して企業の商品を購入してもらえれば、購入額の数%が紹介者に入るとうたうもの。消費者庁によると、実際は販売成果を上げられず、借金が残って被害者となるだけでなく、周囲を勧誘することで加害者にもなり得る。警察庁によると、連鎖販売取引とも呼ばれて厳しく規制され、書面を交付しなかったり、事実と違うことを告げたりすれば、特定商取引法違反の罪に問われる可能性がある。
マルチ商法の相談は、2020年度までは年間1万件前後あり、近年は減少傾向にある。昨年度の相談を年代別に見ると、20代が最多で全体の2割超だった。20代の相談は4月が137件で最も多く、5月の130件が続いた。
警察庁によると、23年は大阪府警が連鎖販売取引に絡む事件を1件摘発し、同法違反(不実の告知など)の疑いで13人を逮捕、1人を書類送検した。府警によると、マルチ商法の手法で暗号資産への投資へ違法に勧誘し、被害者は20代を中心に約2500人、被害総額は約7億7千万円だった。
ただ、事件の検挙がない年もある。背景には、周囲に被害を知られたくない被害者が警察に相談しにくいことや、勧誘で事実が告げられていたかどうかなどの証拠が残りにくいことがある。警察庁は「泣き寝入りせず、早めに相談してほしい」と呼びかけている。
民法改正で18歳から成人となり、高校生でも契約が可能になった。悪徳商法被害者対策委員会の堺次夫会長は「未然に被害を防ぐために、学校での教育が大切だ」と指摘する。(板倉大地)
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