過激な性描写のある漫画などを「不健全図書」に指定し、18歳未満への店頭での販売を禁止する東京都青少年健全育成条例を巡り、都は4日の都議会代表質問で、ホームページ(HP)などでの「不健全な図書類」という記載の変更を検討する方針を示した。未成年が念頭の規制なのに「不健全」という言葉のイメージから成人向け販売に影響が及ぶ場合もあり、見直しを求める声が漫画家たちから上がっていた。(三宅千智)

◆「成人向けにも販売できなくなる」

 都民ファーストの会の村松一希、立憲民主党の山口拓の両議員が質問で取り上げた。「不健全」という言葉について「不当なイメージを与えている」「本来認められている成人向けにも通販大手アマゾンなどで販売できなくなり、漫画家の収入が絶たれている」などと指摘した。

東京都議会の議事堂

 都幹部は「出版社への通知、HPなどの広報物の記載について、条例の趣旨が誤解なく、より明確に伝わるよう検討する」と述べた。ただ、都の担当者は取材に「不健全という表現は条例の目的に照らして適切と考えている」と説明。変更は広報物の記載にとどまり、条例での表現は変えないとしている。

◆パブコメでも84%が「名称変更賛成」

 不健全図書の名称を巡っては3月に「日本漫画家協会」の有志が都議会の全会派に改称を求める要望書を提出。賛同者には「あしたのジョー」のちばてつやさん、「名探偵コナン」の青山剛昌さん、「はじめの一歩」の森川ジョージさんら112人が名を連ねた。  都議会立民が4月5日から約1カ月間実施した名称変更についてのパブリックコメントには268件の意見が寄せられ、84%が「名称変更の趣旨に賛成」だった。

 東京都の不健全図書指定制度 1964(昭和39)年施行の都青少年健全育成条例に基づき、青少年に対して著しく性的感情を刺激したり、甚だしく残虐性を助長したりする漫画、雑誌などを都知事が指定し、18歳未満への書店・コンビニでの販売や閲覧を禁止する。指定された図書はゾーニング(区分陳列)やビニール包装などが義務付けられる。他の道府県も「有害図書」の文言で同様の規制をかけている。

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◆森川ジョージさん「ここが一歩」

 日本漫画家協会常務理事の森川ジョージさんは4日、広報物での「不健全な図書類の指定」という記載について、都が変更を検討すると答弁したことを受け「ここが第一歩。風評被害が少しでもなくなれば」と歓迎した。

「不健全」という呼び方を改めるよう求める森川ジョージさん

 森川さんら漫画家有志は「不健全」という名称の変更を求めて都議会への要望活動を重ねてきた。「私も子どもを持つ親。子どもに見せたくない本があることは理解できる」とした上で「不健全、有害などの言葉はレッテル貼りになっている」と指摘する。

◆「子どもを守る」趣旨は分かる

 本来は18歳未満への規制にもかかわらず、書店や大手通販サイトが取り扱わなくなるケースもあり「事実上の発行禁止になっている」と問題視する。「漫画家は雑誌掲載料だけでは食べていけず、単行本の販売が収入源になる。その経路がつぶされてしまうとつらい。誹謗(ひぼう)中傷もあり、筆を折る作家もいる」と語る。  都の制度は、職員が都内の書店などで月に100冊程度を購入し「不健全図書」を選ぶ。店頭での販売や閲覧が対象で、インターネット上での閲覧や購入は規制の対象外。森川さんは「子どもを守るためという条例の趣旨は分かるが、仕組みが今の時代に合っているのかどうか。制度のあり方も含めて議論が進んでほしい」と期待する。 

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