新型コロナウイルス感染者の移送業務の入札談合を巡り、公正取引委員会は30日、JTBなど旅行大手4社に独占禁止法違反(不当な取引制限)で再発防止を求める排除措置命令を出した。発注者である青森市にも適切に入札が行われるよう要請した。

コロナ関連事業に関する公取委の行政処分は初めて。対象はほかに東武トップツアーズ(東京・墨田)、日本旅行東北(仙台市)、名鉄観光サービス(名古屋市)。課徴金は算定額が100万円未満となったため納付命令を出す基準に達しなかった。

近畿日本ツーリストも2023年11月に立ち入り検査を受けたが、課徴金減免(リーニエンシー)制度に基づく調査開始前の自主申告が認められ、行政処分を免れた。

問題となったのは青森市が22年度に発注したコロナ感染者を自宅から宿泊療養施設に移送する業務の指名競争入札。公取委によると、5社の支店長が事前に電話やメールでやり取りするなどして受注予定者を決定。受注者が業務の一部を他社に再委託することに合意していた。

22年度に計5回あった入札はいずれも近ツーが落札し、落札総額は計約3200万円だった。近ツーが4社に業務の一部を再委託して報酬を分配。東武トップツアーズと名鉄観光サービスは入札の参加資格がなかったが、公取委は談合行為が機能するために役割を果たしたとして違反を認定した。

調査の過程で、青森市の担当者が事業者間の再委託の可能性を認識した上で入札を実施したほか、入札に関連する情報を一部の事業者に伝えていたことが判明。公取委は発注者である市の対応も問題視し、再発防止を求めた。

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