29日、最高裁判所大法廷で弁論が開かれているのは、旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが「差別的な取り扱いで憲法に違反していた」と主張して国に賠償を求めている、5件の裁判です。

午前中は東京と大阪の裁判の弁論が行われ、大阪の原告でともに聴覚障害がある高齢の夫婦が手話通訳者を通じて15人の裁判官に思いを伝えました。

70代の妻は50年前、帝王切開で出産しましたが、この手術の時に何も知らされずに不妊手術を受けさせられました。

子どもは生まれてまもなく亡くなりました。

妻は法廷で「最後まで母も誰も、不妊手術を受けたことを教えてくれませんでした。手術せず、そのままの体にしてほしかったです。聞こえる人も聞こえない人も子どもを産んで育てられる幸せな生活をしたいです」と訴えました。

一方、国は、不法行為から20年がたち、賠償を求められる「除斥期間」が過ぎたなどと主張しました。

午後は札幌と仙台、神戸で起こされた裁判の弁論が行われます。

大法廷で審理されている5件で、高等裁判所はいずれも「旧優生保護法が憲法に違反していた」と認めましたが、このうち4件が国に賠償を命じたのに対し、1件は「除斥期間」が過ぎたとして訴えを退けました。

最高裁はことしの夏にも統一判断を示す見通しで、1万6000人以上の強制的な不妊手術の根拠となった旧優生保護法を憲法違反と認めるかどうか、除斥期間についてどのように判断するのかが焦点です。

北三郎さん(仮名)“国には一言でもいいから謝ってほしい”

原告と弁護団は、29日午前9時すぎ、国に謝罪と補償を求める横断幕を掲げて歩き、最高裁判所に入りました。

原告の1人で都内に住む北三郎さん(仮名)は、「最高裁にはいい判決を出してもらいたい。国には一言でもいいから謝ってほしいと思っている」と話していました。

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