気象庁は27日、局地的な豪雨をもたらす「線状降水帯」が鹿児島県と宮崎県で28日にかけて発生する可能性があると発表した。県単位で予測情報を出すのは初めて。前線や低気圧の影響で大雨が懸念されるなか、予測の単位を細分化した運用の開始日を1日前倒しした。早めの警戒を促すためには情報の認知度向上も課題となる。

「大雨災害の危険度が急激に高まる可能性がある」。27日午前11時すぎ、気象庁が鹿児島、宮崎の両県に線状降水帯の予測情報を出した。発生が見込まれる期間は27日夜から28日まで。同庁は災害への厳重な警戒を呼びかけた。

線状降水帯は積乱雲が帯状に連なり、激しい雨を長時間降らせる。大気の不安定さや水蒸気の量などが複雑に関係し、詳しい発生のメカニズムは解明できていない。

国内で線状降水帯による豪雨災害が相次ぎ、気象庁は2022年6月、スーパーコンピューターを活用して予測情報の発表を始めた。夜に天候が急変して避難が難しくなる事態を避けるため、半日から6時間前を情報発表の目安としている。

気象庁によると、これまでは「東海」「九州北部」など11地区ごとに予測情報を出していたが、3月に新型スパコンの運用を開始。より狭い範囲で雨の降り方を計算できるようになり、ほぼ都道府県単位(56地区)に細分化しても精度に影響しなくなった。

当初は5月28日に運用を始める予定だったが、急きょ27日に早めた。担当者は「現象が起きている最中で運用を切り替えると混乱が生じる恐れがある。線状降水帯が発生する可能性があるため、防災上の観点から前倒しを決めた」と説明した。

住民への呼びかけを進めた自治体もある。

宮崎市は予測情報の発表を受け、SNSで市民に自動配信した。27日午後には市幹部を交えて他の防災気象情報を含めた分析を続け、28日午前0時に情報収集のための会議を立ち上げることを決めた。危険度に応じて避難の呼びかけや避難所開設を検討するという。

気象庁が24年2月、男女2000人にアンケート調査を実施したところ、「どのような情報か理解している」と答えた人は48%にとどまった。住民に適切な避難行動をとってもらうには予測情報そのものの認知度向上も課題となる。

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