講座で教えた人たちと一緒に撮った写真の前でカメラを構える川名さん=横浜市港南区で
脳卒中の後遺症で障害があるフォトグラファー3人の写真展「No Damage,No Life. 脳ダメージがあってこその、人生」が、横浜市港南区の障害者スポーツ文化センターラポール上大岡8階で開かれている。出展者の1人で、展覧会を企画した川名マッキーさん(60)=横浜市中区=は「作品を見て、どんな人でも半歩前に進もうと思ってくれれば」と話す。27日まで。(吉岡潤) 会場の入り口へ続く壁に、思うように動かせない自分の右手を撮った川名さんの作品が飾られている。グラフィックデザイナーでもある川名さんは、意欲的に仕事に励んでいた2020年6月、脳出血に襲われた。右半身のまひ、言葉の発音が十分にできない構音障害が残った。 入院当初は「泣いてばかりいた」という。時間がたってもなかなか回復せず、ストレスがたまり、気がふさいだ。数カ月たち、妻のアキコさん(59)にカメラを届けてもらった。利き腕の右手は使えず、カメラの設定を思い出せなかった。それでも左手で持ち、小指でシャッターを押せた。「うれしかった」。看護師らを撮ると喜んでくれた。 半年の入院生活後、横浜市総合リハビリテーションセンターへ。リハビリに励む傍ら、外に出かけてシャッターを押した。21年4月に退所するとすぐに「破壊と創造」と題する写真展を開いた。「壊れた自分が復活した」という意味を込め、倒れる前と後に撮った作品を並べた。その後も作品展の開催を重ね、22年にはプロカメラマンの養成講座を始めた。 今回、川名さんが共同出展を呼びかけた川崎市の加藤俊樹さん(59)は12年7月に脳出血で倒れ、失語症になった。21年12月に川名さんの個展「破壊からの復活」を見に来て知り合ったという。フィリップ本橋さん(59)は19年5月に脳梗塞を発症し、左半身にまひが残る。22年に川名さんの講座に参加。プロ宣言し、地元の東京都西東京市に密着して撮影を続ける。 会場には人物や日常の風景などを撮った作品約100点が並ぶ。鑑賞に訪れたフォトグラファーの後藤京子さん(50)=横浜市都筑区=は「撮られている人の心が作品に写り込んでいる。撮る側の経験があってこその見え方なのだと思う。パワーを感じた」。川名さんは「暗い過去と決別し、笑えるようになった今を作品を通じて知ってほしい」と話す。午前10時~午後4時。入場無料。川名さんの講座などは、ホームページ(川名マッキーで検索)で紹介している。
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