選手に声をかけるダンデライオンズ監督の井上聞三さん(右端)。2024年3月

 身体や知的など障害の区別がなく誰でも参加できる軟式野球チーム「ダンデライオンズ」が昨年、神戸市で発足し、ルールや道具、練習方法を工夫しながら活動している。監督で特別支援学校教員の井上聞三(いのうえ・ぶんぞう)さん(52)によると、障害者野球では身体障害者が中心のチームが多いといい、「どんな障害がある人でも、野球をやれる環境がないと諦めず一緒に楽しめる場になれば」と話す。(共同通信=伊藤愛莉)

 3月中旬、神戸市内のグラウンドでダンデライオンズと、地域の少年野球チームOBらの練習試合があった。ピッチャーの坪井優磨(つぼい・ゆうま)さん(16)=神戸市=は左手首から先が欠損しており、手首に引っかけられる特殊なグラブを用いて投球した。下肢障害があるバッターがボールを打った際は、後ろで控える別の選手が一塁に代走した。ルールを覚えていない選手が出塁すると、ベンチから監督らが「今走れ」などと指示を飛ばしていた。

 坪井さんは「同じ境遇の人とプレーできるのは当たり前じゃない。この環境が楽しい」と話す。知的障害がある外野手小林愛斗(こばやし・あいと)さん(12)=神戸市=は「野球をやりたかった。技術も教えてもらえてうれしい」と笑う。

 井上さんは以前は身体障害者の野球チームのコーチや監督を務めていた。人数が集まらず、活動が難しくなる一方、知的、発達障害の生徒や保護者からは「野球がしたいが練習する場がない」と相談を受けるように。「障害の内容で区切るとルールづくりや練習はしやすいが、人が集まりにくい。区切りをなくせば活動しやすいのでは」とチームを結成した。

 現在、チームには10~50代の男女28人が所属。月に2、3回、神戸市内3カ所のグラウンドで練習している。車いすの選手らが対応できるようバントや盗塁は禁止とし、代走を取り入れた。知的障害がある選手にルールを覚えてもらうため代走を任せることもある。

 井上さんは「苦手な部分を補い合いながら、練習に励んでいる。将来はどんな障害があっても参加できる大会などを開きたい」と意気込んだ。

試合でバッターボックスに立つダンデライオンズの選手と、代走のために控える選手(右から2人目)。2024年3月
欠損した左手首に特殊なグラブを引っかけるダンデライオンズ投手の坪井優磨さん。2024年3月

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