神奈川県逗子市で2020年に道路脇のマンション敷地の斜面が崩れ、通行中の県立高校3年の女子生徒(当時18)が死亡した事故で、危険な斜面を放置したとして、遺族が県に150万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、横浜地裁であった。中山雅之裁判長は「事故を予見できなかった」として、遺族側の請求を棄却した。
事故は20年2月5日朝に起きた。遺族側は県について、事故前に現場の斜面を2回調査したのに、急傾斜地法に基づく崩落危険区域に指定せず、崩落防止工事をしなかった▽事故前日にマンション管理会社から連絡を受けたのに現場を確認せず、危険情報の収集を怠った――などと主張した。県は「過失がない」などと反論し、請求を棄却するよう求めていた。
判決は、国内で起きた崖崩れのうち、風化によるものは5%に満たず、容易に認識できないと指摘。住民らから斜面の異常を知らせる連絡はなく、県の調査でも異常は見つからなかったとし、斜面を急傾斜地崩壊危険区域に指定せず、崩壊防止工事をしなかったことが著しく合理性を欠くとはいえないと判断した。
遺族は判決前の23日、代理人を通じて「基本的に控訴する意思はありません。何の罪もない娘が一瞬にして命が奪われた痛ましい事件が二度と起きないような社会になることを望みます」とするコメントを出していた。
判決について神奈川県の黒岩祐治知事は「大切なご家族を亡くされ、今なお深い悲しみの中にある遺族の気持ちは察するにあまりある。改めて哀悼の意を表します。県としては痛ましい事故が二度と起こってはならないという強い思いで、崖崩れ対策に取り組む」とコメントした。
この事故をめぐっては、遺族と住民側の和解が成立。横浜地裁は昨年12月、管理会社側に賠償を命じる判決を出している。(村上潤治)
遺族「痛ましい事件、二度と起きない社会に」
女子生徒の遺族が判決前の23日、代理人を通じて出したコメントの要旨は次の通り。
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この提訴は、こうした事故が二度と起きないことを願い、「誠実に向き合って欲しい」との思いからであることは、みなさまに、お話しした通りです。
実は先日来、思うところがあり、提訴を取り下げたいと考えるようになりました。それは交渉などによるものではなく、生前に争いを嫌っていた娘の想(おも)いを考えた時に遺族として争いでなく、安心して暮らせる社会を目指す取り組みを模索していきたいと考えたからです。
私ども遺族が地裁に伺うことはありません。結果は郵送で届く判決書にて把握します。内容は確認しますが、基本的に控訴する意思はありません。
この裁判で行政と争うことは終える可能性が高いですが、事件を風化させないための活動をしていきたいと考えます。
何の罪もない娘が一瞬にして命が奪われた痛ましい事件が二度と起きないような社会になることを望みます。
4年が経過しても遺族の痛み、悲しみは癒やされません。温かく見守っていただければ、幸いです。
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