京都三大祭りの一つ、葵祭が15日、京都市内であった。フタバアオイを飾った平安装束姿で練り歩く約500人の華麗な行列に約3万5千人(府警調べ)が見入った。

 約1キロに及ぶ行列は15日午前10時半に京都御苑(上京区)を出発。下鴨神社(左京区)を経て、上賀茂神社(北区)に向かう約8キロの道のりを歩いた。

 祭りのヒロイン、斎王代を務めたのは中京区の会社員、松浦璋子(あきこ)さん(22)。十二単(ひとえ)を身に着け、午前10時過ぎに京都御所で「腰輿(およよ)」と呼ばれる輿(こし)に乗り込んだ。

 松浦さんは出発前、「天気に恵まれ、新緑や装束の鮮やかな色がとても映える素敵な一日になるんじゃないかなと思っています」と話した。腰輿に飾られたフタバアオイを見つめ、「緑がきれいで葉が大きくて、生き生きしている」と語った。

 壬生寺が実家で、この日の朝、本尊に手を合わせてから祭りに臨んだ。父親で同寺貫主(かんす)(住職)の俊昭さんは「精いっぱい務めてくれることを願っている。集中してもらえれば」と話した。松浦さんはこの日、晴れやかな表情で観衆の前に現れて、大役を果たした。(西崎啓太朗)

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 兵庫県明石市の大学3年生、市柚月(ゆづき)さん(20)は、斎王代のそばを馬に乗って進む女官「騎女(むなのりおんな)」を務めた。参列するのは今回が初めて。40年近く参加している父の聡顕(さとあき)さん(51)も馬をつかさどる「馬寮使(めりょうつかい)」を担った。

 聡顕さんは、上賀茂神社の伝統神事「賀茂競馬(くらべうま)」に長年奉仕してきた。賀茂競馬では馬に乗るのは男性とされる。聡顕さんや弟(19)が馬に乗る様子を見て、市さんは幼い頃から「いつか自分も」と強く憧れた。

 念願だった葵祭での参列が決まり、市さんは3月末に上賀茂神社で乗馬の練習を始めた。毎週末、聡顕さんや弟から手綱の持ち方や姿勢の保ち方を教わった。

 市さんは、下鴨神社での取材に「想像以上に観客が多く、緊張した。伝統的なお祭りに参加しているんだと実感しました」と笑顔を見せた。(関ゆみん)

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 行列には、皇室とのつながりが深い「八瀬童子(どうじ)」として長年参列してきた八瀬地域(京都市左京区)の人々の姿もあった。

 後醍醐天皇(1288~1339)を護衛した縁で、八瀬に住む人たちは代々、朝廷の重要な儀式に仕えてきたことで知られる。

 自営業の山崎敏(さとし)さん(49)は小学6年の長男航(わたる)さん、小学4年の次男翼(たすく)さんと一緒に参列した。山崎さんは「雑色(ぞうしき)」と呼ばれる役人、航さんは小(こ)舎人(どねり)童(わらわ)、初参列の翼さんは童の役を務めた。

 敏さんは「このような機会を与えていただき光栄。子どもと同じ空間で行列に参加できたことはうれしい」と語る。前回も参列した航さんは「今年は楽しさが倍増した」と笑顔。翼さんは「最初は緊張したけど、歩いていたらみんなが手を振ってくれて楽しかった」と話した。(木子慎太郎)

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