同性パートナーと戸籍上同じ名字に変更することを求める審判を名古屋家裁に申し立て、変更が認められた鷹見彰一さん(30代男性、訴訟で使用している仮名)と、パートナーの大野利政さん(同)が15日、オンラインで記者会見した。鷹見さんは「異性の夫婦と何ら変わらない、と広くLGBTQを司法が認めてくれた。国が認めてくれないから生きていて良いんだろうか、と悩んでいる人に『いいんだよ』という声の一つになると思った」と取材に応じた理由を語った。
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鷹見さんは2017年、大野さんと公正証書により結婚契約などを締結。愛知県内で同居して里子を養育している。
申し立てについて、家裁の鈴木幸男裁判長は3月の審判で、2人を「社会観念上、夫婦と同様」と認定。また里子の保育園の通園手続きなどで名字の確認を求められた際、意に反して性的指向を打ち明けざるを得なくなるといったリスクについて、「合理的で社会生活上著しい支障」と判断し、戸籍法上の「やむを得ない事由」だとして名字の変更を許可した。戸籍法は「やむを得ない事由」があれば家裁の許可を得た後に名字の変更の届け出が出来ると定めている。
性的指向を周囲に明かしていない大野さんは会見で、コロナ禍で鷹見さんが発熱し、病院を受診した際に2人の関係を問われた経験を挙げ、詳しく身分を聞かれて打ち明けざるを得なくなる不安があったと述べた。「緊急だったので『同居人』で事なきを得たが、名字が一緒なら『親族』だろうということで受け入れられやすくなる」と、同じ名字が安心感につながるとした。
鷹見さんは、行政機関からの書類が郵便で届いた時に名字が一緒になったとの実感が生まれ、自宅の表札の名字もそろえたと話した。「家族になったという感覚がうれしく、夢がかなった。新婚さんのような気持ち」と喜びをにじませた。大野さんは「(同姓カップルに)名字変更という新たな選択肢を示せたのは喜ばしい」と語った。
ただ、同性どうしの結婚(同性婚)の法制化はまだ実現していない。2人は同性婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反するとして、国を訴えた訴訟の原告でもあり、名古屋高裁での控訴審で同性婚法制化の必要性などを求めている。
大野さんは「(異性婚との)不平等さは解決していない」と指摘。「我が家にとってはベストな選択が、現段階で姓の変更であったというだけ。同じカップルもいれば、そうではないカップルもいる」と述べ、鷹見さんは、選択的夫婦別姓を望む声があることなどを踏まえ、「結婚や名字など、時代にあわせて自由に選択できるようになればいい」と願った。(高橋俊成)
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