【ニューヨーク=佐藤璃子】米消費者金融保護局(CFPB)は20日、米送金アプリ「ゼル(Zelle)」を巡り、ゼル運営会社と米大手銀3行を提訴したと発表した。送金アプリ利用者を対象とした詐欺の被害が増えているにもかかわらず、対策を怠ったとしている。
CFPBは20日、ゼル運営会社アーリー・ウォーニング・サービシズ(EWS)と大手銀のJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、ウェルズ・ファーゴの3行を提訴したと発表した。
ゼルは大手米銀が共同で2017年に始めた小口送金サービス。24年6月時点で1億4300万のユーザー数を抱える。アプリを利用して手軽に送金できる利便性を武器に利用者を伸ばしてきたが、詐欺被害も多く報告されている。
CFPBトップのロヒト・チョプラ局長は声明で「大手銀は決済アプリの競争激化を受けて急いでゼルを導入したが、適切な安全対策を講じなかったために、ゼルは詐欺師にとっての金鉱となってしまった」と指摘した。
CFPBによると、加害者がアプリ内の機能を悪用して利用者の情報を自らの口座にリンクすることで、送金されたお金が本来の受取人である利用者ではなく加害者の口座に直接振り込まれるといった不正行為が横行していた。
大手3行の顧客はゼルの導入以降、計8億7000万ドル(約1350億円)以上の損失を被ったという。詐欺に関する苦情に対し適切に調査をせず、法的に義務付けられた補償を利用者に提供していなかったと報告している。
ゼルの広報は同日、訴えに対し「(訴訟は)法的にも事実関係においても欠陥があり、訴訟のタイミングも我々とは無関係な政治的要因に動機付けられているようだ」と反論の声明を出した。
CFPBは25年1月の政権交代を控え、駆け込むように規制を発表している。次期政権で米政府効率化省(DOGE)を率いる起業家のイーロン・マスク氏は、金融規制の緩和に向け当局の再編を模索するなかで、CFPBの廃止を主張している。
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