【ニューヨーク=朝田賢治、吉田圭織】米物流大手フェデックスは19日、事業を分割すると発表した。書類や小包配送などを扱う部門と、貨物部門に分ける。両事業は共用する資産が少なく、独立したほうが経営の機動性が高まり企業価値が向上するとの指摘が出ていた。業績低迷が続く中、株主の要求に応じることで不満を解消する。
18カ月以内に「エクスプレス部門」と「フレイト部門」に分社し、双方を上場させる。発表を受けてフェデックスの株価は19日の米株式市場の時間外取引で一時10%上昇した。
エクスプレス部門は従来のフェデックスの事業の大半を引き継ぎ、書類の国際速達や一般の小包宅配などを扱う。2024年5月期の売上高は約750億ドル(約12兆円)に達する。
フレイト部門は事業者向けの物流を担う。トラック1台分に満たない事業貨物をパレット単位で集荷し配送するサービスで、商業流通の多様化でニーズが高まっている。売り上げ規模は約90億ドル。
米物流業界は新型コロナウイルス禍の需要拡大の反動から抜け出せず、低迷が続いている。フェデックスは人員削減など40億ドル規模のコスト圧縮を柱とする再建策を進めている。
エクスプレスとフレイトではトラックや配送拠点で共用する部分が少なく、単一の会社が事業をする利点が少ないとの指摘があった。経営再建を進めるなかで両事業の分離を求める声が投資家から上がっていた。
フェデックスは19日の声明で「フレイト部門を独立した会社として分離することで戦略的な機会が生まれる」と述べた。顧客需要を機動的にくみ取れるようになるほか、個々の事業環境に合わせた資本の配分ができるようになるとした。
ラジ・スブラマニアム最高経営責任者(CEO)は19日、投資家向け説明会で会社分割について「競争力を強化することでフェデックスの株式価値を生み出すことができる」と話した。「分割後も業務面や技術面での協力を続ける」とも話した。
フェデックスが同日発表した24年9〜11月期決算では、売上高が前年同期比1%減の219億6700万ドル(約3兆4600億円)、純利益が18%減の7億4100万ドルだった。
部門別では、フレイト部門が前年同期比11%減の21億7700万ドル、エクスプレス部門が横ばいの188億4100万ドルだった。貨物部門の減収について同社は「米国での工業生産の低迷が続き、貨物需要を圧迫した」と説明した。
25年5月期の業績予想は下方修正した。希薄化後の1株当たり利益を19〜20ドルと、従来予想の20〜21ドルから引き下げた。
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