米連邦最高裁

【ワシントン=芦塚智子】米ギャラップ社が17日に発表した世論調査で、米国の司法制度を信頼する国民の割合が35%と過去最低を記録し、先進国を中心とする経済協力開発機構(OECD)加盟諸国での信頼度の中央値(55%)を20ポイント下回った。米国民の司法への信頼が国際的にも低水準であることが明らかになった。

調査は6月28日から8月1日にかけて15歳以上の米国在住者1000人を対象に実施した。米司法制度への信頼度は2006年から20年までおおむね50%~60%前後で推移していたが、20年の59%から24年は35%と24ポイントの大きな落ち込みとなった。OECD諸国はほぼ50%台で安定しているのと対照的だ。

世界各国をみると、司法への信頼が近年大きく低下したのは18年から22年にかけて46ポイント落ち込んだミャンマーをはじめ、ベネズエラ(12~16年に35ポイント下落)や香港(16~20年に28ポイント下落)など政変や混乱があった国が多い。

米国での信頼低下の背景には、連邦最高裁が保守寄りの判断を相次いで下したことに対するリベラル派の不満があるとみられる。

米連邦司法制度への信頼度はリベラル派が多い民主党支持者が21年の50%から24年は24%と大きく下落した一方、共和党支持者は61%から71%と上昇した。無党派は51%から49%とほぼ横ばいだった。

判事9人で構成する米連邦最高裁は、トランプ次期大統領が第1次政権で保守派3人を指名したことで保守6人、リベラル3人と保守に大きく傾いた。22年に人工妊娠中絶の権利を否定し、今年7月にはトランプ氏の免責を一部認めた。保守派判事が共和党の大口献金者から接待や便宜を受けていた疑惑も浮上した。

司法への信頼は、連邦政府や軍などに比べても低下が著しい。連邦政府への信頼度は20年の46%から24年は26%と20ポイントの低下で、米軍は93%から83%へ10ポイント、金融機関は68%から61%へ7ポイント下がった。

バイデン大統領は特に連邦最高裁への国民の信頼回復をねらい、7月に最高裁判事の終身制廃止や拘束力のある行動・倫理規則の策定を柱とする改革案を発表した。しかし25年1月から与党となり議会の上下両院でも多数派を占める共和党は改革に消極的で、実現の可能性は低い。

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