内戦が続いてきたシリアでは、反政府勢力が8日、首都ダマスカスを制圧し、半世紀あまりに及んだ独裁的なアサド政権が崩壊しました。
ダマスカス市内ではこれまでのところ大きな衝突などは確認されておらず、10日は銀行も業務を再開し、ATMでお金を引き出す人の姿もみられました。
反政府勢力のひとつで今回の動きを主導した「シリア解放機構」のジャウラニ指導者は、新政権の樹立を急ぐ考えを示していましたが、10日、暫定政権の首相に、北西部イドリブ県を実効支配してきた統治機構のリーダーのバシル氏が任命されました。
今後、暫定政権の組閣が進められるとみられますが、反政府勢力の中には国連などがテロ組織に指定している組織もあり、複数の反政府勢力が結束して安定した統治を行うことができるか、先行きは不透明です。
インタビューに応じた女性は「あらゆる人が苦しんできました。この勝利が人々を癒やし、幸せに暮らすための始まりであることを願っています」と将来への希望を話していました。
また、内戦が始まった2011年から反政府勢力の旗を持っていたという男性は「自由を求めて、それを実現したシリア国民にとって、ことばでは言い表せないほどの喜びです。この瞬間を待っていました」と話していました。
イスラエル軍 シリアとの緩衝地帯越えか
ロイター通信は10日、イスラエル軍がシリアとの緩衝地帯を越えて首都ダマスカスの南西およそ25キロの地点に到達したとする関係者の話を伝えました。
レバノンメディアも現地の記者の話としてイスラエル軍の部隊が緩衝地帯を越えてシリア側の集落に展開していると報じています。
一方、イスラエル軍は「報道は誤りで、イスラエル軍は緩衝地帯にとどまっている」とする声明を出して否定しています。
イスラエル軍は、アサド政権の崩壊以降、シリア国内の軍事施設などへの空爆を繰り返していて、ネタニヤフ首相は「シリアで発生した新たな状況について、イスラエルの安全保障のために必要なあらゆる行動をとる」と述べています。
国連特使「包括的な取り決めが必要だ」
国連でシリア問題を担当するペデルセン特使は10日、スイスのジュネーブで会見し、「シリアは分岐点にある。『シリア解放機構』は主要な組織だが、唯一の武装勢力ではないと覚えておくことが重要だ」と述べ、首都ダマスカスを制圧した複数の反政府勢力が団結を保てるか注視する必要があると指摘しました。
そして、反政府勢力が樹立を急ぐ新政権については、「社会や政治勢力の代表をできるだけ幅広く参加させた包括的な取り決めが必要だ」と強調した上で、そうした新政権が実現すれば国際社会による経済制裁の解除や人道支援の拡大などにつながるという見方を示しました。
また、シリア国内の状況について「人道状況は悲惨で、経済は崩壊している。国際社会が取り組むべき課題は大きい」と述べ、国外に逃れたシリアの人たちが帰還できるよう、各国に対し、復興支援への協力を呼びかけました。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。