尹錫悦大統領の弾劾訴追案は投票不成立で廃案になった(大統領府提供・聯合)

【ソウル=甲原潤之介】韓国国会は7日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案の採決に入ったが、投票数が規定に満たず廃案になった。与党議員のほとんどが決議前に本会議場から退席し、投票成立の最低ラインとなる200票に届かなかった。尹政権は継続し、政局の混乱が長期化する。

7日午後5時に開会した本会議はまず、尹氏の夫人、金建希(キム・ゴンヒ)氏の疑惑を捜査する特別検察の設置法案を採決した。尹氏が拒否権を使ったため国会で再表決した。要件となる出席議員の3分の2の賛成が得られず、否決された。

この後、弾劾案の採決に入ると、与党議員の大半が退席した。与党所属の安哲秀(アン・チョルス)氏が残って投票したほか、一度退席した数人の議員が戻って投票した。

禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は「驚きをもって見ている世界の人たちを失望させないためにも投票に戻ってほしい」と話した。中立の国会議長として異例の発言だとも付け加えた。

弾劾案は尹氏が3日夜に発出した非常戒厳宣言が憲法違反だとして、野党6党が共同提出していた。

尹氏は3日夜、野党の「反国家行為」が行政をまひさせているといった理由を掲げて非常戒厳を宣言した。軍が国会に進入し制圧を試みるなか、国会に集合した190人の議員が4日未明に解除要求を決議し、非常戒厳は6時間で解除された。

尹氏は採決に先立つ7日午前、テレビ中継で談話を発表した。「国民に不安と不便をかけ、心から謝罪する」と語った。

2回目の非常戒厳は「絶対にない」と断言し「私の任期を含め、今後の政局安定策はわが党に一任する」と述べた。弾劾案に賛成しないよう与党「国民の力」に求める発言と受け止められた。

非常戒厳を巡っては与党内でも公然と批判する声が出ていた。韓東勲(ハン・ドンフン)代表は6日の党会議で、尹氏が政治家の逮捕を指示していたとして即時の職務停止を訴えていた。一方、次期大統領選で劣勢に立たされる懸念から弾劾賛成への慎重論が強かった。

与党は採決の直前、弾劾案の投票を拒否する方針を決定した。尹氏が談話で政権運営を党に一任する発言をしたことから、一定の回答を得られたとしてまとまった行動を取ったとみられる。

与党議員で議場に残ったのは、6日時点で弾劾案賛成の方針を公言していた安哲秀(アン・チョルス)氏らごく少数にとどまった。

野党は反発を強めている。議場では野党議員が総立ちになり、与党議員の名前を一人ひとり読み上げて議場に戻るよう呼びかけた。

最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は7日の採決前、弾劾案が否決された場合は来週に再提出する方針を示した。弾劾案を巡る攻防が続き、国政の停滞は免れない。

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