パリのノートルダム大聖堂は5年前の大規模火災で屋根などに大きな被害が出ましたが、その後、再建工事が進んで公開が再び始まることになり、7日夜、日本時間の8日未明に記念の式典が行われます。

式典には、各国の首脳やアメリカのトランプ次期大統領などが出席する予定で、大聖堂の周辺では警備が強化されています。

ノートルダム大聖堂があるセーヌ川の中州のシテ島周辺では、7日朝から市民や車両の通行が制限されていますが、規制線の手前まで来て、大聖堂を眺めたり写真を撮ったりしている人の姿もみられました。

南部モンペリエから来たという20代の男性は「大聖堂が焼けた時には本当にショックだった。朝早く来て大聖堂を見たいと思った。きょうは1日この周辺を歩くなどして、何も見逃さないようにしたい」と話していました。

フランスメディアは、トランプ次期大統領はすでにフランス入りしたと伝えていて、マクロン大統領は式典に先立ってトランプ氏やウクライナのゼレンスキー大統領とそれぞれ会談することになっています。

ウクライナ情勢をめぐり、早期の戦闘終結に意欲を示すトランプ氏がゼレンスキー大統領と会談するかどうかも焦点です。

ノートルダム大聖堂 火災からの再建

フランスを代表する歴史的な建築物で、ユネスコの世界文化遺産にも登録されているノートルダム大聖堂で火災が起きたのは、5年前の2019年4月でした。

消火活動は難航し、中央にある高さ90メートル余りのせん塔が焼け落ちたほか、屋根の3分の2が崩れ落ちるなど甚大な被害が出ました。

マクロン大統領は、直後にテレビ演説を行い「大聖堂をこれまで以上に美しく再建させる。5年以内に成し遂げたい」と述べて、再建を約束しました。

それから5年と8か月。

火災で崩落したアーチ型の天井は細部まで復元されたほか、すすなどが付着した壁や柱も清掃されたことで、内部は建設当時に近いとされるクリーム色になったということです。

また、8000本ものパイプがある巨大なパイプオルガンも一つ一つ取り外して洗浄が行われたほか、「ばら窓」として知られるステンドグラスもきれいに清掃されました。

フランス大統領府によりますと、これまでの総工費はおよそ7億ユーロ、日本円にして1100億円余りにのぼるということです。

11月29日に大聖堂で修復状況を視察したマクロン大統領は、再建に関わった職人などに対し「ノートルダムの火災はフランス国家の傷だったが、皆さんの決意と献身が不可能なことを成し遂げた」とねぎらいました。

12月8日に一般公開が再び始まったあとも、一部の工事は今後、数年間続けられます。

再建工事に日本人のオルガン職人も参加

「世紀の大工事」とも言われる今回の大聖堂の再建工事には、さまざまな分野の2000人以上の職人らが携わっていて、なかには日本人もいます。

オルガン職人の関口格さんは、火災の前年にあたる2018年からノートルダム大聖堂の専属のオルガン技師として調律などの整備を担っていて、火災後はオルガンの修復に携わりました。

関口さんによりますと、およそ8000本のパイプがある大聖堂のパイプオルガンは火災は免れましたが、すすや有毒な化学物質が付着したため、すべて解体し洗浄する作業が必要だったということです。

さらに、関口さんは音色を整える「整音」という作業を任され、ほかの2人の職人とおよそ半年かけて、パイプ1本1本の調整にあたったということです。

こうした作業は12月4日まで続けられ、パイプの音を聞くため、ほかの工事が行われていない深夜に作業することも多かったと言います。

11月29日にマクロン大統領が大聖堂を視察した際にはほかの職人とともに招待され、大統領からも直接、謝意を示されたということです。

29日、大聖堂近くで取材に応じた関口さんは「大勢の人が力を合わせてここまで来た。国を挙げての大工事だった。一人一人の職人が持てる力を出し、結集した」と工事を振り返っていました。

そのうえで「オルガンの響きも以前よりよくなっていると思う。できるだけ多くの人に感動してほしい。大聖堂も明るくきれいになり、ぜひ実際に見に来てほしい」と話していました。

修復された大聖堂のパイプオルガンは、7日の式典でその音色がお披露目される予定です。

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