アメリカの首都ワシントンにあるシンクタンク「戦争研究所」のキンバリー・ケーガン所長が5日都内でNHKの取材に応じました。

世界で起きている紛争の分析を続けてきた「戦争研究所」は、ロシアによるウクライナ侵攻について、戦況を詳細な地図にして分析し連日公開していることでも知られています。

ケーガン所長は、ウクライナ侵攻を続けるロシアの目標について「ウクライナの政治をクレムリンに従属させ、防衛能力を持てないように武装解除することだ」と述べウクライナをヨーロッパから引き離して中立化し、ロシアの勢力圏にとどめておくことだと指摘しました。

一方、ウクライナについては「非常に興味深い方法で防衛線を死守している。無人機や高度な人工知能などのテクノロジーを活用していて私たちが目の当たりにしているのは戦争の性格の劇的な変化だ」と述べ、新たな技術が次々に投入されるウクライナの前線で起きていることが世界の戦争に劇的な変化をもたらすとの見方を示しました。

そのうえで、アメリカと同盟国は、軍の装備の近代化に努めるべきだと強調しました。

また、ケーガン所長は、今後のウクライナ情勢の見通しに関連して「ロシアが核によるエスカレーションに関与するかどうか考慮することは大事だ」とした一方で「アメリカは、エスカレーションを心配しすぎている」とも述べアメリカや同盟国は、ロシアの脅しに屈することなくウクライナの独立を維持するため軍事支援を続けることが重要だと強調しました。

アメリカの「戦争研究所」とは

「戦争研究所」は、世界各地の紛争や安全保障に関する問題について、公開情報をもとに独自の分析を行っている非営利のアメリカのシンクタンクです。

軍事史の専門家としてアメリカの陸軍士官学校やイェール大学などで教べんもとってきたキンバリー・ケーガン所長によって2007年に設立されました。

「戦争研究所」によりますと、2003年から始まったイラク戦争では、現地の情勢を正確に記した情報が不足し、偏った報告が政策立案者に有害な影響を与えているとして独立した分析結果を提供するため設立を決めたということです。

ケーガン氏は、2010年からはアフガニスタンの首都カブールに滞在し、当時、アメリカ軍の現地司令官を務めたペトレアス氏を補佐するなど戦略面でも支援してきました。

「戦争研究所」は、おととし始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて大幅に体制を強化し、現在は、およそ50人の研究員やスタッフが所属しているということです。

ウクライナ情勢だけでなく中東や中国・台湾の情勢なども分析しています。

「戦争研究所」の存在が広く知られるようになったきっかけの1つが戦況などを地図で示したわかりやすい分析です。

このうちウクライナの戦況を巡っては、ロシア軍が占領地を拡大している地域や激戦が続いている場所などを詳しく地図に落とし込み、連日、公開を続けています。

また、ウクライナ軍がアメリカ製の射程の長いミサイル「ATACMS」を使った場合、攻撃が可能な範囲や、そのエリア内にあるロシア軍の基地を地図に示すなどして、ウクライナ軍がこうしたミサイルを制限なく使用できる有効性についても伝えています。

「戦争研究所」が公開しているさまざまな地図や分析は、世界各国のメディアや専門家が繰り返し引用しています。

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