ロシアによるウクライナ侵略が長期化するなか、ウクライナで地雷や不発弾の除去に向けた取り組みが進んでいる。ウクライナ軍への被害を抑えるほか、国外に避難したウクライナ人を帰還させるには地雷の除去活動は欠かせない。民間人が多く参加する除去チームは粘り強く作業を続けている。
ウクライナのシュミハリ首相は10月、スイス・ローザンヌで開催された地雷除去に関する国際会議で「ウクライナの地雷除去への支援を強めてほしい」と各国の出席者に訴えた。
ロシア軍がウクライナ東部などで攻勢をかけるなか、ウクライナの国土の最大4分の1ほどに相当する地域で地雷の危険性が指摘されている。空中から散布されるものもあり、地雷の危険性がある場所は必ずしも戦闘地域だけではない。
地雷を探索する地雷除去作業員の人数はウクライナで数千人に達しており、地雷除去に取り組む組織は40を超える。最大規模となるのが、英非政府組織(NGO)のヘイロー・トラストのウクライナ支部だ。
ウクライナ南部ミコライウ州はヘイロー・トラストが地雷除去に携わる地域のひとつだ。地雷除去作業員を育成するため、ヘイロー・トラストはミコライウで2つの訓練場を運営している。
訓練場では統一された基準に沿って、作業員が探索作業の訓練に取り組んでいる。地雷除去作業員が金属探知機で現場を探索する。地中に金属を発見したら草木を取り除き、特殊な道具を使って少しずつ掘り起こして調べていく。探知機が反応するのはさびた釘などの場合もある。
ヘイロー・トラストの除去作業は手作業による地雷除去作業とブルドーザーなどの重機を使った地雷除去作業の2種類に大別される。手作業による地雷除去の専門家は1日に平均4〜5平方メートルの土地を確認し、作業時間のほとんどは膝をついて過ごす。
作業員の訓練を担当するアレクセイさんは「実際の除去作業では地雷や砲弾が毎日見つかるわけではない」と根気強い作業が求められると語る。
作業員として働くイリーナさんはウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムトで生まれ育った。戦火から逃れて首都キーウ(キエフ)近郊に移り住んだ際にヘイローへの関心を深め、1年前から地雷除去要員として働いている。「対人地雷そっくりのブリキ缶を見つけたこともある」と述べ、恐怖を感じながらも慎重に作業していると語る。
ブルドーザーなどの機械を使った除去作業では、作業者は少なくとも50メートル離れた装甲板の後方から遠隔で機械を操作する。
アレクサンドルさんは1年半ほど手作業による地雷除去作業員として働いた後、現在は掘削機の遠隔操作の技術を磨いている。ロシアによる侵略以前、彼は南部ザポロジエ州フリアイポレで50ヘクタールの土地を保有する農家だった。
同氏が住んでいた地域は現在、ロシア軍が制圧する。「戦勝後(フリアイポレの)地雷除去活動に参加したい。そうなることを信じている」と思いを吐露した。
この記事はキーウ在住のフリージャーナリスト、ワジム・ペトラシュク氏の取材を基に編集しました。鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。