ロシアは12月1日から軍兵士の総数を最大150万人に増やす。2026年までの目標を前倒しにする。同国西部クルスク州におけるウクライナ軍の越境攻撃に対応するほか、ウクライナ東部で攻勢をかける。停戦交渉を視野に戦況を優位に運ぶ狙いがある。
ロシア軍の兵士は23年12月以降、132万人で推移しており14%増となる。ショイグ国防相(当時)は23年1月、26年までに150万人まで拡大すると言及していた。プーチン大統領が24年9月、兵士を増やす大統領令に署名した。
ロシアが22年2月にウクライナ侵略を始める前の兵士総数はおよそ100万人程度だった。侵略開始後に大幅に増員し、侵略前との比較では5割増となる。
プーチン氏は6月、ウクライナ侵略におよそ70万人の兵士が参加していると明らかにした。
ロシア軍は停戦交渉を始める前にウクライナの制圧地域を拡大しようと急いでいる。
兵士を増やして現在支配しているドネツク州などウクライナ東部で攻勢を強める構えだ。11月の米大統領選で早期停戦を公約に掲げるトランプ前米大統領が当選し、停戦交渉の開始が現実味を帯びてきた。
兵士の死者7万人超え、補充急ぐ
プーチン氏は21日の国民へのビデオ演説で「ロシア軍は順調に前進しており(特別軍事作戦の)任務はすべて達成されるだろう」と強調した。ただ兵士の死傷者数は増え続けており、早期に補充する必要がある。
英BBCなどは11月、ロシア軍の兵士のウクライナにおける死者数は侵略後、7万8000人以上に上ると伝えた。
ロシアの独立系メディア、メドゥーザは10月に軍の死者や重傷者を合わせた「回復不能な損失」は同月中旬までで少なくとも25万5000人を超えるとの分析を報じた。
プーチン氏は6月、ウクライナ侵略におよそ70万人の兵士が参加していると明らかにした。ロシア国防省は兵士の損失を補うため、志願兵である契約軍人を採用して継戦能力を確保しようとしている。
一時金や債務減免で採用拡大
ロシア紙コメルサントによると、西部クルスク州に隣接するベルゴロド州は10月、契約軍人に支払う一時金を260万ルーブル(約360万円)と従来の3倍に増やした。23年のロシア人の平均月給の約35倍にあたる。
北極圏のヤマロ・ネネツ自治管区などでも増額が相次いでいる。首都モスクワのソビャニン市長は7月、契約軍人の一時金として190万ルーブルを支払うと発表した。
一時金は連邦政府からの支給額に各地の当局が上乗せして支払う仕組みで、州などの連邦構成体ごとに異なっている。
ロシア軍に参加すれば債務を減免する施策も打ち出した。プーチン氏は11月23日、12月1日以降に軍と1年以上の兵役に関する契約を締結した場合に1000万ルーブルを上限に借金の返済を免除する法律に署名した。
メドベージェフ安全保障会議副議長は7月時点で、年初から19万人の兵士が契約したと表明した。1日あたり契約軍人を1000人程度のペースで増やしているもようだ。
ロシア側は認めていないが、北朝鮮はクルスク州での戦闘に1万1000人程度の兵士を派遣したとみられる。韓国メディアはロシアが北朝鮮兵士に月額約2000ドル(約30万円)を支払うと報じた。
英紙フィナンシャル・タイムズは11月、ロシアが中東のイエメンからも人員を募集し、戦闘員として数百人をウクライナの前線に投入していると伝えた。
戦時下の経済支える側面
兵士の採用拡大は戦時下のロシア経済を支えている側面もある。「兵士の給与や死傷者への支払いに充てられる一時金が国内消費を押し上げている」(ロシアの経済専門家)との見方が出ている。
死亡した兵士の遺族には政府による死亡一時金のほか、保険会社からの保険金などが支払われる。独立系メディアは遺族が受け取る金額について1000万ルーブル超に達する場合があると伝えている。
失業率は24年7〜9月期に2.4%と過去最低水準で推移する。インフレを上回る給与の増加などで実質可処分所得は増えており、同期の実質可処分所得は前年同期比9.4%増えた。
国内消費はプラス成長が続いている。欧州ビジネス協議会(AEB)によると、ロシアの1〜9月の新車販売台数は前年同期比で58%増えた。
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