ロシアのプーチン大統領は21日に公表したビデオ演説で、同日のウクライナ東部の要衝ドニプロの攻撃に新型の中距離弾道ミサイルを用いたと発表した。ウクライナによる米英製の長射程兵器を使ったロシア領内への攻撃に対抗する措置だと説明し、兵器を提供する西側諸国を強く非難した。
米欧の防空システムでも「迎撃できない」
プーチン氏は21日のドニプロへの攻撃に使用したのは新型の中距離弾道ミサイルで、「オレシニク」と命名されたと明らかにした。ウクライナによる米英製の長射程兵器を使ったロシア領内への攻撃への対抗措置として実験的に発射し、ドニプロの軍事施設への攻撃が成功したと説明した。
新型の中距離弾道ミサイルは極超音速で飛行し、米欧の防空システムでも「迎撃することはできない」と強調した。米国が欧州やアジア太平洋地域に中・短距離ミサイルを配備する動きに対抗するためだと説明した。
ウクライナ軍は同日、ロシアが大陸間弾道ミサイル(ICBM)でウクライナ領を攻撃したと発表した。欧米メディアが西側当局者の情報としてドニプロへの攻撃はICBMではなく中距離弾道ミサイルだった可能性が高いと報じるなど情報が交錯していた。
中距離弾道ミサイルは一般的に射程が3000〜5500キロメートルまでとされ、射程が5500キロメートル以上と長距離攻撃が可能なICBMとは異なる。
ウクライナ軍は19日に米国から供与された長距離地対地ミサイル「ATACMS」でロシア西部ブリャンスク州の軍事施設を攻撃した。20日には英国製の空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドー」でロシア領内に攻撃した。
欧米への報復、「武器を使用する権利がある」
プーチン氏は「西側諸国によって引き起こされたウクライナの紛争はグローバルな性格を帯びるようになった」と米国などを非難した。「こうした兵器を使用したからといって、特別軍事作戦の戦闘に影響を与えることはできない」と強調し、ロシア軍はウクライナ東部などで前進を続けていると指摘した。
プーチン氏はウクライナに兵器を支援する西側諸国への報復措置をとる可能性を示唆し「我々の施設に対する武器の使用を許可している国の軍事施設には、(ロシアの)武器を使用する権利があると考えている」と述べた。ロシア領内への攻撃が拡大した場合には、同様の断固とした対応をとると述べた。
一方で、プーチン氏はビデオ演説で「我々は常に平和的手段によってすべての紛争を解決することを望んできたし、現在もその用意がある」とも述べ、停戦交渉の可能性に触れた。
プーチン氏は6月のロシア外務省での演説でウクライナ侵略に触れ、同国との停戦の条件としてウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の撤退が必要と述べた。「ウクライナが(ロシアが併合した4州から)軍隊を撤退させ、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を放棄すれば、我々は即座に停戦し和平交渉を始める」と述べた。
今月7日に南部ソチで開催した有識者会合「ワルダイ会議」でプーチン氏は米大統領選で勝利を確実にしたトランプ前大統領について「対話する用意がある」と述べた。トランプ氏がロシアとの関係を修復し、ウクライナでの「危機」の終結に寄与したいという考えを示していることは「少なくとも注目に値する」とも言及した。トランプ氏との交渉を優位に運ぶ狙いとみられる。
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