SECのゲンスラー委員長は金融界に厳しい規制を提案してきた=ロイター

【ニューヨーク=斉藤雄太】米証券取引委員会(SEC)は21日、ゲンスラー委員長が2025年1月20日に退任すると発表した。26年6月までの任期の満了を待たずに退く。共和党のトランプ次期米大統領は選挙戦でゲンスラー氏の解任を明言していた。政権交代を機に金融業界に厳しい姿勢で臨んだSECの運営にも影響が出そうだ。

ゲンスラー氏は声明で「SECは素晴らしい機関だ」と述べ、投資家保護や公正な資本市場の整備に向けて取り組む職員をたたえた。「一般の米国人のために働き、米国の資本市場が世界で最も優れた市場であり続けるよう努めてきたことは生涯の名誉だ」とした。

ゲンスラー氏はバイデン政権の指名で21年4月にSEC委員長に就任した。米金融大手ゴールドマン・サックス出身ながら、オバマ政権下の米商品先物取引委員会(CFTC)委員長時代に金融規制改革を推進し、金融界に厳しい当局者という評判だった。

実際、SEC委員長として暗号資産(仮想通貨)事業者の詐欺などの不正行為の摘発に力を入れたほか、ファンドの透明性を高める情報開示などルールづくりも積極的に進めた。米上場企業に気候変動の情報開示を求める規則も策定し、産業界や共和党から「SECの権限を逸脱している」と反発の声も出ていた。

トランプ氏は大統領選キャンペーンのさなかの7月下旬、仮想通貨の業界イベントで講演し、業界の締め付けを強めるゲンスラー氏を「(大統領に復帰したら)就任初日に解任する」と宣言した。ゲンスラー氏がトランプ氏の大統領就任と同じ日に退任することになり、SEC委員長の後任選びが加速しそうだ。

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