消費者の節約志向が強まる中、ネット通販最大手が割引券を発行するなど、各社の間で顧客の獲得競争が激しくなっています。

11月11日は、中国では独身を意味する数字の「1」が並ぶため、「独身の日」と呼ばれ、この日にあわせネット通販各社などが、毎年、大規模なセールを行っています。

東部・江蘇省にあるネット通販の販売業務を請け負っている会社では、セールがピークを迎えた10日、従業員が、夜遅くまで、取引先の商品の売れ行きを確認したり、客からの問い合わせに応じたりしていました。

中国では、景気減速で消費者の節約志向が強まっていて、1か月近くにわたって行われたことしのセールでは、ネット通販最大手が日本円でおよそ6300億円分の割引券を発行するなど、各社の間で顧客の獲得競争が激しくなっています。

さらに近年、メーカーなどがSNSのサービスを利用して独自の販路を強化する動きも広がっています。

(ネット通販販売代行会社 王珊CEO)
「ネット通販では動画投稿アプリなどとのシェアの奪い合いや価格競争が起きている。『独身の日』は以前と比べて、静かになっているが、競争はますます激しくなっている」

景気の減速傾向強まる中 消費に慎重な姿勢目立つ

中国では、不動産不況の長期化などを背景に景気の減速傾向が強まる中、人々の間では消費に慎重な姿勢が目立ちます。

中国の中央銀行がことし4月から6月に行ったアンケート調査では、お金の使い方について「消費を増やす」と答えた人は25.1%と去年の同じ時期と比べて0.6ポイント増えましたが、「貯蓄を増やす」と答えた人は去年の同じ時期を3.5ポイント上回り、61.5%となっていて、お金を貯蓄にまわす傾向がいっそう強くなっていることが伺えます。

中国最大の経済都市・上海で「独身の日」のセールについて話を聞くと、40代の男性は「経済環境がよくないですから節約が最も大事です。今は必要なものは買いますが、買っても買わなくていいものはできるだけ買いません」と話していました。

別の女性は「セールに前のような勢いはないですし、お金もありませんから、以前と比べると買う量は減りました」と話していました。

背景に若者を中心とした厳しい雇用情勢

百貨店やスーパー、インターネット販売などを合計した「小売業の売上高」は、ことし9月、去年の同じ月と比べて3.2%のプラスとなり、伸び率は前の月の2.1%から拡大しました。

ただ、宝飾品や化粧品、衣類、酒やタバコなどがマイナスとなっていて、伸び率は依然として低い水準にとどまっています。

また、中国の10月の消費者物価指数は去年の同じ月と比べて、0.3%上昇したものの、自動車やスマートフォンなどが値下がりしていて、デフレへの懸念が続いています。

背景には、不動産不況の長期化で住宅価格の下落が続いていることに加え、若者を中心とした厳しい雇用情勢があるとされていて、ことし9月の16歳から24歳までの失業率は17.6%と高止まりが続いています。

中国政府は、内需を拡大するため、企業の設備の更新や自動車の買い替えを促す対策などを進めていて、ことし7月には、およそ3000億元、日本円で6兆4000億円あまり補助金を拡充すると発表しました。

ただ、消費を押し上げる効果は限定的だという指摘もあり、より大規模な消費刺激策を求める声が出ています。

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