早くも活発 トップロビイスト
今回、私たちの取材に応じたのは、首都ワシントンでロビイストとして活動するジョン・ラッセル氏(49)です。
ラッセル氏は10年ほど連邦議会で下院議長のもとで働くなどアメリカ議会の人脈に精通し、2007年からロビイストとして活動していて、アメリカの政治専門紙「ヒル」が選ぶトップロビイストの1人として2016年から毎年、名前が挙げられています。
ワシントンにあるラッセル氏のオフィスには、民主党のクリントン元大統領や共和党のギングリッジ元下院議員など大物政治家と一緒に写っている写真が並べられ、民主党と共和党それぞれと人脈を築いてきたことがうかがえます。
ラッセル氏によりますと、例年、アメリカ大統領選挙の年は、ロビイストが活動を強めるのは、11月に大統領が決まってからですがことしはすでに夏ごろには国内外の企業などからの問い合わせが多く、ロビイストの活動が活発化しているということです。
ロビイスト ジョン・ラッセル氏
「ロビイストがすでに忙しいのは、トランプ氏の『不確実性』によるものだ。企業は、自分たちの問題や懸念を知ってもらおうと早い段階から関係を築こうとしている。トランプ氏は、関係性を重視するからだ」
ラッセル氏は、特に共和党のトランプ氏が再選する可能性を視野に入れてトランプ氏の政策を具体的に知り、ビジネスをどう展開すればよいか検討する企業の依頼や相談が増えていると明らかにしました。
今回の大統領選挙でエネルギー分野をめぐっては、民主党のハリス氏が「クリーンエネルギーの研究開発の投資を継続し、世界をリードできるようにする」などとしてバイデン政権の政策維持を示す一方、共和党のトランプ氏は「ドリル、ベイビー、ドリル(掘って、掘って、掘りまくれ)」などと訴え、アメリカの石油・天然ガス産業を後押しすると主張しています。
ラッセル氏は、エネルギー業界の企業などからも依頼を受けて活動しているということで、業界の関係者はどちらが次の大統領となるのか注視していると指摘します。
具体的には、再生可能エネルギーのメーカーからはトランプ氏が再選すると再生可能エネルギーへの投資が撤回され、ビジネスが展開できなくなるのではないかという懸念が聞かれる一方、石油会社などからはトランプ氏の選挙資金に大きく貢献していることから自分たちにとっては有利な政権になると期待が高まっているということです。
そのうえで「次の大統領が決定してからは、エネルギー政策が移民政策の次に議論されることになるだろう」と話しています。
このほか、海外からの輸入品に対して高い関税を課すと掲げるトランプ氏の政策を懸念し海外企業などからの問い合わせも増えているとしています。
ラッセル氏は毎日のようにワシントンの連邦議会に足を運び、議員や政府関係者などと対話を重ねているということで、取材をした10月下旬も「今日は共和党側と会う。議長のオフィスで下院議員の指導部と会談した後、院内幹事のオフィスに向かう」と話し、議会に向かっていました。
ロビー活動費 “驚異的な金額”に
アメリカではロビー活動の開示についての法律があり、報酬を受け取るロビイストに対し、自身の活動や過去に政府機関の役職に就いていたかどうかなどについて報告書を提出するよう義務付けています。
こうした報告書などをもとに調査を行っている非営利団体「オープンシークレッツ」によりますと、ロビー活動に使われた総額は2024年1月から9月までの9か月間でおよそ33億ドル、日本円でおよそ5000億円で、同じ時期を過去10年で比べると最も多くなっています。
こうした傾向について、オープンシークレッツは8月に「驚異的な金額になっている」と指摘しています。
また、企業や労働組合、それに業界団体などの要望を受けて議会や連邦政府機関への働きかけを行っているロビイストは9月までに1万2000人あまり登録され、こちらも過去10年で最大規模となっています。
専門家「どちらの政党が勝利しても意見を聞いてもらえるように」
アメリカの公共政策に詳しく10年以上ロビイストの活動を研究・分析しているハーバード大学ケネディスクールのマーク・フェーガン氏は今回の選挙が非常に接戦となっていることから多くのロビイストが活動を活発化させていると指摘しています。
ハーバード大学ケネディスクール マーク・フェーガン氏
「多くのロビイストがどちらの政党が勝利しても、意見を聞いてもらえるようにしておくことを目指している。ロビイストたちはどちらが当選するかということよりもどんな政策を擁護するべきなのかなどについて、より重点を置いている。そして、今後の政策についての情報を集めて戦略を練り、新しい政権の重要なポジションに誰を配置するべきか考えているところだ。いま、ロビイストがしようとしていることの1つは自らの意見を支持してくれる特定の人を政権に入れるよう働きかけることだ」
そのうえで、フェーガン氏アメリカにおけるロビイスト活動について、フェーガン氏は次のように指摘しました。
マーク・フェーガン氏
「時代とともにロビー活動に重点を置く業界の変化が見られる。エネルギー業界は、常に主要な分野だ。ここ最近はテクノロジー業界も主要になってきている。現在、AIの分野では大手企業がグループを結成し、アメリカのAI関連の政策に影響を与えようとしている」
取材を終えて ロビイストたちの動きにも注目
フェーガン氏は、選挙後は、次の政権がどのような政策課題をかかえているのかや新政権のもとで誰を重要な閣僚のポジションに置くのか、さらにロビイストの活動が強まっている分野などを見ていくことで、政策の変化が具体的に見えてくると話していました。
大統領選を制するのはどちらの候補か。
ロビイストたちも注目する投票日が迫っています。
アメリカ大統領選挙 特設サイト
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