インドネシアのプラボウォ新大統領が就任した。就任式で「非同盟を続け、いかなる軍事協定にも参加せず、さまざまな国と友人であることを選ぶ」と伝統の中立外交を堅持する方針を示した。
同国は世界4位の2億8千万人の人口を抱える大国で、2022年に20カ国・地域(G20)の議長国を務めた。経済協力開発機構(OECD)へ加盟申請し、中国やロシアが主導するBRICSへも加わる意向を新たに表明した。「グローバルサウス」と呼ぶ新興国・途上国の要として、国際秩序の安定に向けた貢献を期待する。
プラボウォ氏は2月の大統領選で、政権末期まで高い人気を保ったジョコ前大統領の路線継承を訴えた。鉄道や高速道路などのインフラ整備や鉱物資源の加工産業を育成する「下流化」、過密なジャカルタから新都市ヌサンタラへの首都移転などの政策を引き継ぎ、独立100周年にあたる45年の先進国入りに向けた重責を担う。
大統領選での勝利後、国防相の立場で約20カ国を訪問した。米中対立やロシアのウクライナ侵略、中東の緊張など地政学情勢は混迷を増す。大国の責任を自覚し、より主体的に関わっていくべきだ。
気になるのは国会議員の8割を連立与党に引き入れる一方、権力の監視役の独立機関を弱体化させる試みがみられることだ。民主主義を後退させる動きは、前大統領時代から目立つようになった。
1998年にスハルト長期独裁体制が崩壊して以降、インドネシアは民主化を漸進させてきた。民主的に選ばれた指導者が民主主義を傷つける事例は、世界で枚挙にいとまがない。就任式で「私たちは民主国家でありたい」と誓ったプラボウォ氏に行き過ぎた権力行使の自制を求めたい。
同氏は当選後に訪中した直後、日本にも立ち寄って当時の岸田文雄首相と会い、日中間でバランスを取る姿勢を示した。日本もインドネシアとの連携を密にし、経済・安全保障の両面で、地域の安定と発展に力を尽くす必要がある。
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