米西部シアトル郊外の工場でストライキを実施するボーイングの社員ら=ロイター

【ヒューストン=花房良祐】経営再建中の航空機大手である米ボーイングは28日、新規資金調達の具体策を公表した。普通株などを新たに発行し、少なくとも約190億ドル(2兆9000億円)を調達する計画だ。主力工場で労働組合によるストライキが1カ月以上続き資金が流出している。財務を改善し社債格付けの引き下げを回避する考えだ。

28日、普通株9000万株に加え、転換権付優先株50億ドル分を発行すると発表した。足元の市場価格で計算すると、普通株発行は140億ドル規模の調達につながる。売り出し価格は28日の米市場の引け後に決定される見通しだ。

投資家の需要が大きければ追加売り出しも実施するという。米証券ジェフリーズによると、合計調達額は210億ドル超に膨らむ可能性もある。

増資で財務内容を改善し、手元資金も厚くする考えだ。ボーイングは9月中旬から米国内の主力工場でストが発生し、小型機「737MAX」や大型機「777」の生産が滞っている。2024年10〜12月に40億ドル規模の資金が流出する可能性がある。

同社の手元資金は9月末に約105億ドルとなり3カ月前と比べ2割減少した。このままだと事業運営上、同社が望ましい水準としている100億ドルを割り込む可能性が高い。

同社の格付けは「投資適格級」としてぎりぎりの水準で、あともう1段階引き下げられたら「投資不適格級(ジャンク債)」となる。社債の発行金利が上昇する。

格付け会社は財務体質を改善しなければ格下げの可能性があると警告しており、ボーイングは対策として10月中旬、今後3年で新株や社債の発行などを組み合わせ最大250億ドルを調達する可能性があると公表していた。

ボーイングは1月に小型機の胴体に穴が開く事故が発生し、製造品質問題が発覚。工場の品質改善に取り組んでいる。そのさなかに労使交渉がこじれ、3万人以上が加盟する労働組合のストが発生し、経営が混乱している。

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