ロシアや中国など有力新興国で構成するBRICSの首脳会議が22日、ロシア西部カザンで開幕した。ウクライナ侵略などをめぐり米欧の制裁を受ける中ロは、グローバルサウス(新興・途上国)を取り込んで枠組みを広げ、世界の多極化を印象づける狙いだ。
ロシアのプーチン大統領は23日の全体会合の冒頭「BRICSは多極化が進む中で世界の安定と安全保障の分野における情勢にプラスの影響を与えている」と主張した。経済成長や参加国の拡大によってBRICSの国際的な影響力が高まっているとの見方を示した。
BRICSは中ロに加え、インド、ブラジル、南アフリカが参加する枠組み。今年1月にエジプトやイラン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアが加わった。
ロシアのウシャコフ大統領補佐官によると、今回の首脳会議には36カ国が参加し、うち首脳級は22人が出席する。ロシア大統領府はこれまでの加盟国に加えて、新たに「パートナー国」制度の創設について議論するとしている。
ウシャコフ氏は23日、パートナー国として13カ国のリストが合意されたとロシアメディアに語った。ブラジル紙によると、トルコやインドネシア、マレーシア、タイ、キューバなどが含まれている。
ロシアや中国はBRICSを欧米への対抗軸と位置づけている。ロシアが重視するのが国際的な金融決済だ。欧米による金融制裁を回避するため、BRICSの枠組みを使った新たな決済システム構築について協議する見通しだ。
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「多極主義」を掲げる。BRICSの勢力を拡大し、西側諸国に対する「防波堤」にしたい考えだ。9月に訪ロした中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は「BRICSとグローバルサウスには幅広い共通利益がある」と述べた。
国際通貨基金(IMF)によると、2005年に10%だった世界の国内総生産(GDP)に占めるBRICSのシェアは、新規加盟した4カ国を含めて24年に26%超となる見通し。BRICSは存在感を増すグローバルサウスの国々を取り込んで、国際社会で発言力を確保したい考えだ。
もっとも、BRICS内は一枚岩ではない。インドは日米とオーストラリアの枠組み「Quad(クアッド)」にも参加し、BRICS拡大に慎重な姿勢を示してきた。欧米とも親密な関係を維持する「全方位外交」が基本姿勢だ。
ブラジルもイランなどの友好国をBRICSに引き入れる中国の動きを警戒し、抵抗してきた。ブラジルメディアによると、同国は首脳会議でBRICSの参加基準の明確化を求める立場を強調するという。
新規に加盟を申請・希望する国々もまとまりに欠け、政治的なスタンスは「反欧米」だけではない。
米欧中心の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)の一員であるトルコはBRICS加盟によってアジアやアフリカとの経済協力の拡大を狙っている。エルドアン大統領は「加盟によりトルコがNATOを放棄することにはならない」と明言した。
タイも経済的な実利を重視している。新型コロナウイルス禍で傷ついた経済の回復が遅れ、21年以降の成長率は1〜2%台と東南アジアの最低水準だった。BRICSは自動車やコメの輸出先で、自国経済の立て直しにつなげる狙いだ。
マレーシアは国際社会における自国の発言力を高めようとしている。イスラム教徒が多く、中東での戦線を広げるイスラエルを支援する米国への不満が強まったこともBRICSへの加盟申請を後押しした。
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