ドイツの防衛大手「ラインメタル」のパッペルガーCEOは、17日、西部デュッセルドルフの本社でNHKのインタビューに応じました。
会社は、ウクライナに軍事支援を行う各国からの受注を受け、ウクライナ軍に兵器や砲弾を供給していて、アメリカのメディアはことし7月、ロシアがパッペルガー氏の暗殺を計画していると報じました。
これについてパッペルガー氏は、「情報機関からそうした話を聞いた」と述べ、ドイツ政府が警護を強化していると明らかにしました。
その上でウクライナ軍の状況について「NATO=北大西洋条約機構による支援抜きに戦争に必要なものを調達できない。彼らは独り立ちはできない」と述べ、単独ではロシアに勝てないとの見方を示しました。
さらに、ウクライナへの軍事支援について「戦闘機や砲弾などが供与されてはいるが、戦争に直面すれば消耗し、新しいものが必要になる。われわれは支援を止めず、継続しなければならない」と述べ、侵攻の長期化に伴い欧米各国で財源不足や支援疲れが表面化する中で、支援を継続できるかが重要だという認識を示しました。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領が16日、明らかにした「勝利計画」については「もっとウクライナに力を与えるよう欧米側へ圧力をかけるものだ」と述べ、軍事支援の強化を呼びかけた内容だとしています。
一方、ヨーロッパ各国の砲弾の生産能力はロシアの半分だとする推計も示し、ロシアに対抗できるようになるには今後5年から7年は必要だと指摘しました。
そして、11月のアメリカ大統領選挙で、ハリス氏とトランプ氏のどちらの候補が勝ってもヨーロッパ各国はさらなる国防費の支出を求められるとの見通しを示し、「ヨーロッパは冷戦終結後、アメリカに頼りすぎた。アメリカ抜きでは防衛できなくなっている」と述べ、独自の防衛力の強化を急ぐべきだとする考えを示しました。
ヨーロッパ有数の防衛企業「ラインメタル」
ドイツの「ラインメタル」は、欧米各国の軍が使用し、ウクライナにも供与された主力戦車「レオパルト2」の戦車砲をはじめ、さまざまな兵器や砲弾を開発、生産するヨーロッパ有数の防衛企業です。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて各国がウクライナへの軍事支援や自国の軍の強化を急いだことで受注が急増していて、2023年の売り上げは前の年から12%増えて71億ユーロ余り、日本円で1兆1000億円余りとなっています。
そして、ことしの売り上げはおよそ100億ユーロ、日本円で1兆6000億円余りに達すると見込まれています。
ラインメタルは、ウクライナ軍に多くの兵器や砲弾を供給していて、ことし6月までに自社が開発した歩兵戦闘車「マルダー」を中心に100両以上の歩兵戦闘車を現地に届けたということです。
また、ことし6月にはウクライナに軍用車両の整備拠点を開設したほか、今後は現地で砲弾や新型の歩兵戦闘車「リンクス」の生産をはじめる予定で、ウクライナに関わる事業をさらに拡大する方針です。
アメリカのCNNテレビはことし7月、こうしたウクライナとの結び付きの強さからロシアが会社のトップ、パッペルガーCEOの暗殺を計画していることをアメリカの情報機関が察知してドイツ側に伝え、未然に防いだと報じ、大きな注目を集めました。
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