【ニューヨーク=竹内弘文】米大手投資会社ブラックストーンが17日発表した2024年7〜9月期決算で、プライベートクレジット(ファンドによる融資)を含むクレジット部門の期末運用資産は前年同期比22%増の3547億ドル(約53兆円)となり、同社最大の事業部門となった。金利水準の低下で融資実行額が増えた。ファンドへの資金流入も続く。
部門別の運用資産は不動産が2%減の3251億ドル、プライベートエクイティ(未公開株=PE)が12%増の3447億ドルだった。クレジット部門の運用資産が最大となるのは18年9月末以来、6年ぶり。全社の運用資産は10%増の1兆1076億ドルとなり、過去最高を更新した。
クレジット部門は7〜9月期に投資家から214億ドルの新規資金を調達した。プライベートクレジットの戦略への資金流入が調達額の大半を占めた。プライベートクレジットの直近1年間の投資収益率(手数料控除後)は12.4%。流動性が低い代わりに高めの利回りが機関投資家や富裕層のマネーをひき付ける。
一方、期中の融資実行額は184億ドルとなり、前年同期比の3倍強に膨らんだ。米連邦準備理事会(FRB)の利下げを背景に米国債利回りが低下し、M&A(合併・買収)などに関わる企業の借り入れニーズが高まった。ジョン・グレイ最高執行責任者(COO)は決算説明会で、買収資金以外にも「高格付け企業向けの融資需要は劇的に増加している」と説明した。
FRBの利上げ局面で逆風が吹いていたPEも、金利水準の低下や株式相場の上昇を受けて事業環境が好転してきた。7〜9月期の新規資金調達額、新規投資実行額ともに前年同期比で3倍前後となった。
ブラックストーンは全社的に投資活動の加速に動いている。投資実行額と投資を確約した額の合計は540億ドルとなり、2四半期連続で500億ドルを突破した。9月にはアジア太平洋地域で最大のデータセンター運営事業者、豪エアトランクを240億豪ドル(約2兆4000億円)で買収すると発表した。
「米長期金利がピークを付けた23年10〜12月期から、投資ペースを大幅に引き上げている」。スティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)は説明し「良好な環境下で将来の価値創造に向けた種まきを実施している」と述べた。
ブラックストーンの7〜9月期の純利益は前年同期比41%増の7億8083万ドルとなった。運用環境の好転で手数料収入が増加したのが増益の主因。株主還元へ充てられる分配可能利益も市場予想を上回り、17日の米株式市場では株価が前日比8%程度上昇する場面があった。
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