ウクライナのゼレンスキー大統領は16日、ウクライナの議会で演説し、ロシアによる軍事侵攻を終わらせるためとしてまとめた「勝利計画」の内容を初めて公表しました。
「勝利計画」は5項目にわたり、
▽ウクライナのNATO加盟に向けた正式な手続きが無条件で開始されることや
▽ウクライナの防衛力の強化などが盛り込まれているとしています。
ゼレンスキー大統領は17日、ベルギーの首都ブリュッセルを訪れ、EUの首脳会議とNATOの国防相会議にそれぞれ出席し、この「勝利計画」の内容を説明して理解を求める予定です。
日本時間の17日午後5時半すぎ、EU本部にEUのミシェル大統領とともに到着したゼレンスキー大統領は「われわれの勝利計画をロシアによる侵攻当初から支援してきてくれたリーダーたちと共有することはとても重要だ」と述べ、EU各国の理解を求めたい考えを示しました。
また、ミシェル大統領は「EUはウクライナ側にいる」と述べ、引き続き支援していく考えを示しました。
一方、ロシア外務省のザハロワ報道官は16日、勝利計画について「NATOとロシアを直接、衝突させようとしている」と述べ、ウクライナを批判するとともに支援を続ける欧米側をけん制しました。
「勝利計画」の5つの項目は
ゼレンスキー大統領が16日に演説の中で示した「勝利計画」の5つの項目は、
(1)NATO加盟の正式な手続きの開始
(2)ウクライナの防衛力の強化
(3)ロシアに対する抑止力の強化
(4)潜在的な経済力の強化
(5)戦争終結後のNATOの強化です。
(1)NATOの加盟についてゼレンスキー大統領は、ウクライナが未加盟だったことがロシアの侵攻を招いたとした上で「加盟は将来のことだと理解しているが、地政学的な計算が失敗していることをプーチン大統領にわからせるべきだ」と述べました。
その上で、NATO加盟に向けた正式な手続きを速やかに、無条件で開始するよう求めました。
(2)ウクライナの防衛力の強化についてゼレンスキー大統領は「戦場でわが陣地を防衛すると同時に、戦争をロシア領土に押し戻し、ロシア国民に戦争の何たるかを実感させるのは現実的だ」と述べた上で、ロシア領内への攻撃を通じて士気を低下させることが自国の防衛につながるという考えを示しました。
具体的には、ウクライナ国内に緩衝地帯が作られるのを防ぐことを目的としたロシア領内での越境攻撃の継続や、ミサイルや無人機に対応する防空システムの強化と近隣国と合同での迎撃作戦の実施などを挙げています。
さらに、より射程の長い兵器をロシア領内の軍事施設への攻撃に使えるよう欧米側の制限を撤廃することなどを訴えています。
そして、勝利に必要な兵器のリストも作っているとしています。
(3)抑止力の強化については「核兵器によらない包括的な戦略的抑止力」の展開を提案するとしています。
そして、抑止力を強化することで「ロシアが誠実な外交プロセスに参加するか、戦闘を続ける能力を失うかのいずれか」に持ち込むとしています。
(4)潜在的な経済力の強化では資源開発の協力を掲げていて、ウランやチタン、リチウムなどの地下資源の採掘・活用に向けた投資を呼び込むとしています。
そのうえでゼレンスキー大統領はウクライナ、ひいてはヨーロッパの経済力の強化につなげたい考えを強調しました。
(5)NATOの強化は、ウクライナの兵士が経験したことをヨーロッパの安全保障に役立てるというもので、ヨーロッパに駐留するアメリカ軍の役割をウクライナ軍が一部担うことも想定しているとしています。
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